株価暴落、テロ速報...ロボットジャーナリズムは記者より優秀?

ロボティア編集部2016年6月25日(土曜日)

 2015年、自動車業界はある事件で騒然となった。フォルクスワーゲンの排ガス不正問題だ。この事件が報道された後、フォルクスワーゲンの株価は暴落したが、データマイナー(Dataminr)と呼ばれる会社の顧客は事態を事前に把握。フォルクスワーゲンの株式を売り損害を被らなかった。この事件がメディアを通じて大々的に報道される3日前、データマイナーはビッグデータ分析を通じて、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題を記事にし顧客に知らせたのだった。

 データマイナーは、今年3月に発生したベルギー・ブリュッセルテロの際も、ニュース速報よりも10分早く顧客に事実を知らせた。ビッグデータ分析を土台としたロボットアルゴリズムを採用していたため可能なことだった。

 ロボットジャーナリズムとは、その名の通り、ロボットとジャーナリズムという単語をかけ合わせた造語。コンピュータがソフトウェアやアルゴリズムに基づき、記事を作成することを意味する。

 データマイナーは、Twitterと公式パートナーシップを締結。ツイートの内容をもとに、速報や重要な情報トレンドを顧客に提供している。 1日4億以上のツイートを分析して、そのうち異常な活動や重要な意思決定を下さなければならない事案などを、利用者に迅速に知らせるのだ。

 米国ではすでに、主要メディアがロボットのアルゴリズムを積極的に活用し、高速かつ膨大に生成されるデータを分類・整理し記事として配信している。 LAタイムズやロイター、AP通信などではすでに、速報記事や簡単なニュースはロボットが作成している。

 LAタイムズは、ロサンゼルスとその周辺で発生する地震関連情報を自動的に収集し、整理するためにクエイクボット(Quakebot)と呼ばれるソフトウェアを利用している。一方、スタッツモンキー(Stats Monkey)は、米国の野球地域リーグのニュースを自動的に生成している。一方、英ガーディアンは、ロボットが編集した週刊誌を発行。オートメイティッドインサイト(Automated Insights)という企業は、ワード・スミスというロボット記事作成サービスを報道機関に提供する。

ロボットジャーナリズム_dataminr
photo by Dataminr

 ロボットジャーナリズムの使用が拡大されるにつれ、市場も急速に成長している。韓国科学技術情報研究院(KISTI)が発行した「KISTIマーケットレポート人工知能特集号」にはロボットジャーナリズムの世界市場規模の推移が予想されている。2014年には2億8000万ドルから2021年12億ドルへ。年平均17.4%ずつの成長が示された。

 ロボットジャーナリズムの分野が急速に成長することで、人間の記者の仕事が奪われるという意見も出ている。ロボットの方が効率的に優れている面があるからだ。

 未来学者であるトーマス・フレイは「コンピュータアルゴリズムとロボットの開発が進み、20年後には20億個の職業が消えると予想されるが、ここには記者も含まれる」と指摘したことがある。

 ロボットジャーナリズムの実情を知る報道関係者は「(ある報道機関では)ロボットが1日250個程度の記事を書いている(中略)ロボットが書いた記事は、インターン記者が記事を書くレベルで、人間の記者が校正・校閲を行えばすぐに記事にできる」と説明している。

 ロボットジャーナリズムは、読者によってパーソナライズすることができるため、個別にカスタマイズされた速報を読みたい読者のニーズを満たすことができるという主張もある。報道機関が、読者が気になるすべての記事を書くには、莫大な人件費と時間が必要だが、ロボットはそれを簡単に解決することができる。

 一方、ロボットジャーナリズムは、データに基づいたニュースしか書けないという欠点もある。つまり現象を見聞きしたり、それをデータとしておこすには人間の力が必要となるということだ。また、ひとつの現象について、単純な事実しか伝えることができないという問題も指摘されている。むしろ、単純な事実以上の見解については、ロボットが書くことを許すかどうかという人間側の事情の問題もある。

 例えば、今回、英国のEU離脱問題をニュースをロボットが報じるとしよう。その投票結果は報じることはできる。ただ、どちらの結果が正しかったかという見解を書くことは難しかったり、そもそもそれ書くこと自体、“正しい”のかという問題が出てくる。また、ロボットジャーナリズムには、虚偽の記事を広めた場合、罰せられたり,責任を取る主体がまだ想定されていない。ともあれ、ロボットが膨大な情報から記事を生みだすという作業はすでに始まっていて、その精度も日毎に上がっている。今後、ロボットジャーナリズムは、社会にどんな変化をもたらすのだろうか。好奇心が尽きない話題だ。