物流倉庫や組立生産工場など現場を中心に自律走行型搬送ロボット(AMR)が普及・拡散している。そんななか、AMRの安全性に関する問題が大きな懸案事項として議論され始めている。というのも、これまでの産業用ロボットとは異なり、AMRやAGVは人間の作業者と協働することになる。自律走行型搬送ロボットには基本的に、障害物を避ける技術が搭載されているものの、導入初期段階では人間の作業者側はその安全性を疑ってみざるをえないからだ。
デンマーク移動ロボット専門企業・MiRの北米地域副社長であるエド・モルレン(Ed Mullen氏は、メディアに寄稿文を掲載している。彼はモバイルロボットが現場で安全に動作するためには、ロボットメーカー、システム・インテグレータ(SI)、エンドユーザーが互いに責任を持ち、協力していかなければならないと強調した。ロボットメーカーの安全基準のみを鵜呑みにする都、職場の安全を守ることができないという意味である。
経営陣は移動型ロボットの導入前、作業者の安全性の問題を真剣に議論する必要があるとする。センサー、ソフトウェアアルゴリズム、人工知能などは、移動型ロボット設置時に、作業者の安全を確保するための重要な要因となるため、その特徴を丁寧に確認すべしという指摘だ。
欧州では現在、「EN 1525:1997」という規格が、AMRの分野で最も多く適用されているとエド氏。この安全基準は、AGVだけでなく、「AGVシステム」にも適用される。AGVシステムとは、システム・インテグレータが実際の作業環境に合わせてロボットをプログラミングしたり、ロボットとワークスペースを新たに設計する作業や、モバイルロボット、充電ステーション、AMRのモノを積載する上部部分「トップモジュール」、作業環境、周辺装置などを包括する概念である。
EN 1525に続き、今年1月中に「ISO / FDIS 3691-4」という規格が発表される予定である。 「ISO / FDIS 3691-4」はAMRが即時に走行ルートを変えなければならするときに適用される安全性の懸念を扱う。人や障害物に接触しそうになった際、自律走行型ロボットはすぐに経路をリセットする必要があるが、その時に安全性の問題が浮上することがある。新しい規格は、モバイルロボットの製造および依頼、環境、ワークスペースの設計等に関する要件を詳細に規定するものと予想される。
米国の場合、「国立標準研究所(American National Standards Institute)/産業用トラックの標準開発財団(Industrial Truck Standards Development Foundation)」がEN 1525と類似した「5-2012」という安全基準を策定・運営している。
他にも今後、「ISO 10218」、「prRIA 15:08」、「prUL 3100」などの安全関連規格がモバイルロボットメーカー、システム・インテグレータ、ユーザーに影響を与えるものと考えられている。
それらに加えて、欧州では販売業者、エンドユーザー、システム・インテグレータに安全な職場をつくるのに必要なガイドラインを提示している。欧州外の事業者は必ずこのガイドラインを遵守する必要はないが、国家および地域の要件を反映してプラント全体に適用する必要があるというのがエド・モルレン氏の主張である。
エド・モルレン氏は、AMRメーカーが安全なAMRシステム導入のために、システム統合・運用に関する適切な情報を提供しなければならないとする。また、AMRの適切な使用および限界などに関する責任を明示する必要があり、メーカーはAGV規格を満たし、CEマークを貼付しなければならないとする。加えてAMR導入時に考えられる危険因子について言及し、すべての危険に対応できる補完的な安全基準も遵守しなければならず、AMR導入時に必要な操作、メンテナンスなど文書も正確に提示すべきだとする。
次にシステム・インテグレータは、潜在的な危険性が現実化しないようロボットをプログラミングし、ワークスペースやトップモジュールなどを設計する必要がある。またAMRシステムの使用と限界などを明示してAMR規格に合わせてAMRシステムのリスクを正確に評価しなければならない。加えて、AMRシステムの運用と保守に関するガイドラインを設けて、関連文書を提供しなければならないとする。
AMRシステム導入後、ユーザーはロボットシステムの運営とメンテナンスに関する手順を設け、運営しなければならない。作業者のロボット動作および操作手順、作業者を対象としたロボット操作訓練、スタッフや訪問者のための安全な操作手順など用意する必要がある。
上記のように、ロボットメーカー、システム・インテグレータ、エンドユーザー間の安全規制に関する協力が行われる時、作業場の安全が確保されるというのがエド・モルレン氏の指摘となっている。
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