産業用ロボットは大規模な生産ラインでのみ力を発揮するのではない。ドイツの例を見れば、むしろ中小企業にとって重要度の高い技術と言えそうだ。
例えば、200年の歴史を持つドイツのビール会社ロットハウスは、過去10年の間にビール出荷量が4倍に増えた。9年前、スイス製ロボットIRB7600を導入したためだ。ロボットが物を運ぶなどの単純労働を代替し効率化に成功。同社の2014年の出荷量は、史上最高(毎時3万本)を記録した。
産業用ロボットはこれまで、自動車の組立や電子部品の生産工程などに主に使われてきた。ただ最近では、スイスのABB、日本のファナック、ドイツのクーカ(KUKA)など、中小型産業に適した中低価格のロボットメーカーが増え、導入実績も拡大している。スイスではパンの包装に利用されており、英ヨークシャーのレンガ工場では、火鉢で熱く熱したレンガを取り出す際に利用されている。米ニューヨークのホテルには、荷物を運んで部屋を案内するロボットが導入されている。
世界ロボット工学連盟(IFR)によると、2013年に、食品、化学、サービス業などの中小企業で導入されたロボットは前年比10%増。自動車業界のロボット購入は、4%増加にとどまった。これは、ロボットが活躍する場所が、人々の頭の中にあるイメージ以上のものだということを示唆してくれる。
日本のロボットメーカー・ファナックの欧州代表クリス・サマー氏は、「ヨーロッパ内のロボットの販売は年間20%ずつ増加しており、お客様の80%は中小企業。中小企業を対象に『ロボット教室』を開くなど、市場の拡大に力を入れている」と述べている。
中小企業が企業全体の80%以上であるドイツでは、ロボットの市場成長が最も速い。ドイツのロボット企業クーカは2014年に、7500台の産業用ロボットを販売した。このうち20%は中小企業が購入している。クーカのロボット価格は1万3000〜20万ユーロ(約175万円~2700万円)となっている。
スイスの産業用ロボットメーカーABBのパー・ペガード・ナセス代表は「ドイツの中小企業がスマートフォンを使用するようにロボットを活用する日は遠くない。初めて使用する人も快適にアクセスできるように操作法を簡素化している」と話している。