「マスターアルゴリズム」著者が預言する人工知能の未来

ロボティア編集部2016年10月15日(土曜日)

「スーパー人工知能である『マスターアルゴリズム(The Master Algorithm)』は、人類の大革新の原動力になるだろう。これを支配する者が、将来の世界の支配者となる」

 人工知能分野の世界的な権威であり、ベストセラー作品「マスターアルゴリズム」の著者であるペドロ・ドミンゴス(Pedro Domingos)氏(米国ワシントン大学教授)は11日、世界知識フォーラムの「2100メガトレンド:AI時代」セッションで、スーパーAI時代の到来を強調した。

 ドミンゴス教授は「有名な未来学者であるレイ・カーツワイルは、人工知能が人間の知能を超える瞬間を“特異点”と規定したが、これは技術が自ら無限に発展することができる時点を意味する(中略)現在もAIが導き出した結果を、人間が理解していない場合がしばしば(中略)そのような点から、すでに特異点を超えたとみられる」と自説を展開している。人間がいなくとも、AIが自ら技術を開発する時代が迫っているという主張だ。

 それと共に彼は“進化ロボット”の開発の試みを事例として挙げた。クモのデータを自動で収集・分析するAIが3Dプリンタに接続され、3DプリンタはAIの指示に応じて自動的に進化クモロボットを生産するシステムの開発の試みが既にあるという。ドミンゴス教授は「もし人類の歴史にターミネーターが実際に登場するのならば、そのような方法で現れるのではないか」と観測を示した。

 ただし、彼はその技術水準のスーパーAIを、マスターアルゴリズムと呼ぶかどうかは断定が難しいともいう。現在AIは、記号論、統計学、心理学、進化生物学、神経科学などを参考にして、それぞれ5つの方法で設計されているが、この方法を統合して設計してこそ、真のマスターアルゴリズムが完成されると主張する。

 例えば、記号論を基に設計されたAIは、インターネット上のデータを帰納的に収集・分析する。一方、神経科学に基づいて作られたGoogleのアルファゴなどは、人間の脳に似た、全く別のシステムなのだが、これらを統合する作業が必要だという。

「5つのアルゴリズムをひとつに統合したマスターアルゴリズムが登場すれば、科学の歴史の中で最も偉大な進歩になるだろう(中略)16世紀のデンマークの天文学者ティコ・ブラーエが惑星の動きをデータとして残し、ヨハネス・ケプラーがこれをもとに惑星の運動法則を作り、アイザック・ニュートンはそれらをもとに万有引力の法則という絶対的な真理を示した。今日、ビッグデータは、数十億人分のブラーエとケプラーの役割を果たしており、これをもとに、より多くのニュートンが生まれるだろう」(ドミンゴス教授)

 また、ドミンゴス教授は、彼は、「家電メーカーや自動車メーカーの人工知能関連企業買収が目立っているが、現在はマシンラーニング(machine learning)技術を確保していなければ、企業の生存を保証することができない時代になった」とも強調した。