ロボットアームは、「品質の安定化」、「製造コスト削減」、「生産性の向上」などを図るため、自動車業界・電機業界・食品業界など幅広く活用されている。今後、製造業のみならずサービス業・農林水産業など、ロボットアームを含むロボットの活用先は広がり、2035年ごろには現在の3倍以上の9.7兆円まで市場拡大する予測もある([3])。
今後ますます活躍が期待されるロボットアームであるが、これまでのロボットは人間が作ったプログラムに従い動くものや、人間が遠隔操作するものなど、作業の「自動化」のために導入されることが主であった。製造業においてロボットを導入する場合、自動車のフレームなどは車種ごとに形は違えど、それほど多くの種類があるわけではなく、人によりプログラムされたロボットにより作業の自動化・効率化を図ることができる。
しかし、サービス業・農林水産業などにおいて扱うものは人や野菜などの有機物がほとんどであり、自動車のフレームとは比較にならないほど、その形や重さは多岐にわたる。こういった多様性に富むものをロボットで扱う場合、その全てに対応するようにプログラム化するのは非常に難しい。こういった場合には、ロボットの自動化ではなく「自律化」が必要となる。そこで、近年進化が目覚ましいAIをロボットに搭載することにより、ロボットが自ら考え動作する自律型ロボットが注目されている。つまり、今後のロボットが製造業のみならずサービス業・農林水産業にまでその応用範囲を拡げていくために、AIの活躍が求められる。
ロボットが自律的に動作するようになるため必要なAIとして、最も有効と考えられているのは機械学習の一つである強化学習である。強化学習をロボットに搭載することにより、ロボットは自律的に学習しタスクをこなすようになる。強化学習の有名な応用例では、Google傘下のディープマインドが開発した囲碁の人工知能であるAlphaGoや、テトリスを解くAIなどが挙げられる。産業応用としては、山積みされた製品を一つずつ掴み並べなおすピッキング作業や、もしくは一掴みで当分量の千切りキャベツを取るといった応用例が既にある。しかし、強化学習では、学習完了までの学習・試行回数が膨大にかかり、実課題に適用する上での大きな障壁の一つとなっている。
学習時間が長くなるという問題に対して、一般的に非常に有効な手段の一つとして、転移学習があげられる。転移学習とは、別タスクで学習されたモデルを、新しいタスクにも適用することで、最初から学習するよりも効率的に学習させるテクニックである。この際、全く異なるタスクで学習されたモデルを転移させた場合、むしろ逆効果となりうる。そのため、似たようなタスクで学習したモデルを使用する必要がある。転移元を選択するのにスパースモデリングが寄与できる可能性がある。
スパースモデリングを得意とする企業にハカルスがある。同社は、人工知能を使ったデータ解析サービスを提供する京都発のベンチャー企業であり、「人と共生する人工知能」を作ることを目指している。ハカルスの人工知能「Hacarus Edge」は、現在の主流であるディープラーニングとは異なる手法であるスパースモデリングを採用することで、「軽量」「安全」「人間が理解可能」なソリューションを提供している。
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