英国では人工知能(AI)への投資規模が成長勢をみせている。テックネーションによれば、2018年の英国内AI投資は10億2100万ドルを記録。2014年比で6倍増加した。2019年には上半期だけで10億6300万ドルとなっており、これは米国、中国に次ぐ世界第3位の数字となっている。
一方、コンサルティング企業・MMCは、英国AIスタートアップへの投資は過去5年間で継続的に増加し、2018年に約13億ドルに達したと見積もっている。こちらは、フランス(4億ドル)、ドイツ(3億ドル)に比べて3倍ほど多い額だ。買収されたAI企業の数でも米国に次ぐ二番目。グーグルに買収された・ディープマインドや、Twitterに買収されたマジックポニーテクノロジーはいずれも英国企業である。
英国政府も成長率の鈍化や高齢化に対応するため、AI産業へのテコ入れを強化している。2017年にAI育成政策を発表し人材育成に乗り出した。これまで、10億ポンドを超える金額をSTEM教育やAI技術の再教育、AI修士・博士の養成に注いでいる。 2025年までに人工知能関連の博士1000人、コンピュータ科学関連の教師8000人を育成するため、教育費も支援する計画だとする。
英国政府は、海外の技術人材に発給するビザ承認も増やしている。AIなど先端技術の人材を誘致するために2014年から優秀人材ビザを発行している。申請者が継続的に増加傾向をみせるなか、2018年から発行定員を既存の1000人から2倍の2000人にまで拡大。2019年には、「スタートアップビザ」も新設した。
英国ではアクセラレーターも活発だ。ロンドンには「Entrepreneur First」など約200のスタートアップアクセラレーターがある。ベンチャー投資の30%を還付する税制や、「規制サンドボックス制度」など、新事業に投資しやすい環境があるためだ。なお、英国のAIスタートアップへの投資は、初期段階前が80%、中期段階以降が20%と、起業しやすい環境があるとされる。
なお、AI投資の活性化を支える国際通商省(DIT)の関係者がメディアに答えたところによれば、英国がAI投資および開発で強みを見せる理由のひとつは「オープンデータ」が豊富な点だという。最近、キングス・カレッジ・ロンドンが都市民の寿命と環境汚染の相関関係を測定したが、それらの研究にもオープンデータが用いられたという。また国際通商省の関係者は、2018年に160万人であった85歳以上の人口が2043年に300万人にまで増えるとの予想のなか、高齢化問題にも人工知能や機械との協業を積極的に模索していくとしている。
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