進む「データ畜産」…家畜の疫病早期発見や飼育工程管理にAI活用

ロボティア編集部2017年8月28日(月曜日)

 日本の主要畜種の飼養戸数は、すべての畜種において減少が続いている。農林水産省の「畜産統計」によれば、2005年に8万9600頭だった肉用牛は、2015年には5万4400頭となった。担い手の高齢化や後継者不足による離農が原因と見られている。 

 一方で、1戸当たりの飼養頭羽数は増加しており、大規模化が進展している傾向も見られるという。担い手不足と大規模化が進む畜産業において、大きな期待を寄せられているのが人工知能(AI)の活用だ。 

■牛一頭一頭にウェアラブル端末 

 例えば、ファームノート社の「Farmnote Color」というサービスがある。牛の首にウェアラブル端末を装着して、活動量や休息時間などの活動データを収集。そのデータは牛群管理システム「Farmnote」に保存され、データを人工知能が個別的に学習することで、牛の発情や疫病兆候などの異常を正確に把握することができるという。 

 効率的に牛を生産するためには、雌の発情期を正確に見抜いて種付けをする必要がある。ただ、牛の発情期は3週間に10時間程度とされており、これまでは見逃しも少なくなかった。Farmnote Colorを使えば、スマートフォンに「発情兆候が強いようです」などと通知されるため、見逃しも大幅に削減することができるという。何よりも、牛一頭一頭の個体差を考慮して分析するため、データが増えるほど精度が高い異常検知が可能となるそうだ。Farmnoteは現在、1600の農家が導入しており、16万頭の牛が管理されている。 

 映像解析によって、家畜の病気を早期発見する研究も行われている。大阪大学産業科学研究所の八木康史教授らの研究グループは、酪農学園大学の中田健教授と共同で、人物歩行映像解析技術を乳牛に応用し、乳牛の歩行を撮影した映像から蹄の疾病を早期発見する手法を開発。99%以上の高精度で発見できるというのだから驚きだ。AIを活用して酪農家の目の行き届かない細部まで乳牛を観察することができれば、酪農家の省力化を実現できる。 

■飼育から出荷までAIが担う 

 さらに一歩進んで、AIロボットを活用したブロイラー養鶏飼育衛生管理システムの研究開発も行われている。鹿児島大学や富士通などのグループが行っている研究で、AIロボットやセンサー、カメラなどを使って鶏舎内の環境を監視、死亡した鶏などを自動で発見・回収する衛生管理システムだ。人を介さない養鶏が実現すれば、コスト削減はもちろん、防疫態勢の強化にもつながるだろう。 

 飼育や管理だけでなく、養豚の出荷予測にAIが使われているケースも。自社ブランドの豚肉の飼育から出荷までの養豚事業を展開しているグローバルピッグファーム社は、出荷予測業務においてマイクロソフトの「Azure Machine Learning」の導入を検討。養豚の出荷に要する日数や頭数は、これまで飼育担当者の経験則による予測が行われてきたが、AIが導入されることでより精度の高い予測が期待されている。

  同じく、データホライゾンとNTTドコモは、食用豚の生産管理コスト削減を目指し、IoTを活用した業務効率化の実証実験を来る9月に開始するという。豚の出荷時期は体重によって決まるのだが、これまでは人手を使って体重を計測してきた。しかし、豚舎内に設置したカメラで豚の画像を撮影し、AIに豚の画像データと体重データを学習させることで、体重の測定が可能に。飼料の節約にもつながり、豚肉の生産コストを大幅に引き下げることができるそうだ。 

 効率化と高品質に貢献するということで、大きな注目を集めている畜産業におけるAI活用。今よりも安くておいしい牛肉や豚肉が食卓に並ぶ未来は、確実に近づいてきている。

(執筆:呉承鎬)

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