死んだ豚の画像も解析…AIとビックデータ活用した保険・金融商品が増加

ロボティア編集部2018年9月4日(火曜日)

金融・保険分野では、人工知能とビックデータの活用が活発化して久しい。中国保険大手「平安保険」は、それら技術を最大限に活用する企業のひとつである。同社は顧客データを確保・分析し、解析結果をもとにパーソナライズされた保険商品やローン商品を推薦する。例えば、収入を質問した後、顔認識技術を活用して借り手の表情を読み取るという分析も行う。これは「借り手が事実を言っているかどうか」を分析するためで、仮に嘘と疑われる場合にはより高い金利が設定される場合もあるという。

顔認識技術とビッグデータ分析という技術の組み合わせは、人間以外にも用いられる。例えば「斃死(へいし)した豚」だ。平安保険は、農家が斃死した豚の写真を撮って送ると、先立って保管されていた画像データと照合。農家が所有する特定の豚か否か判断し、補償が支払われるサービスを提供している。事例のように、ビッグデータを活用することで、顧客にカスタマイズ、もしくはパーソナライズされたサービスが、次々に実現可能になると期待されている。

米保険会社「プログレッシブ」(Progressive)は、運転者の運転習慣を測定できる装置を開発し分析に活用している。装置は、急ブレーキ、急発進の頻度、運転時間や距離などデータを収集する。走行距離が短く、運転が丁寧な場合には相対的に事故のリスクが少ないと判断。保険料を最大30%まで割引してくれる。中国の保険会社18社は、「アントファイナンシャル」が開発した損害査定システム「定損宝」を導入している。これは、顧客が撮影した写真をもとに車両のモデル、欠損箇所などを把握。見積もりをわずか数秒で算出するというものだ。

一方、ビックデータのなかでも「金融ビッグデータ」は「高品質データ」と評価されている。分類・分析が容易かつ、コンピュータに楽に入力できる形式になっている上、個人の経済活動と直結したデータだからだ。

金融業界では、ビッグデータを活用したパーソナライズされた金融商品の開発がトレンドとなっている。代表的なものとしては、個人の経済的な能力を把握し、それに見合った金利のローン商品を提供するというものがある。

これまで金融企業は、個人の預金・貸出など金融取引の記録をもとに信用格付けを決定。それに応じて貸出金利を設定してきた。しかしながら、金融取引が多くない学生や主婦、新社会人にとっては不利となる。そこで、中国アリババグループのインターネット銀行「マイバンク」と、テンセントグループの「ウィバンク」は、通信料金の支払い状況、オンラインショッピングのデータを活用し金利に反映している。金融取引の記録が少なく、これまで高金利のローンを組みざるをえなかった人たちが、データによって返済能力を証明され「金利低下」という恩恵を受けることができるというわけだ。なお2015年に設立されたマイバンクは、2018年初めまでに700万人の顧客に融資するという実績を積み上げている。

米フィンテック企業「ゼストファイナンス」(ZestFinance)は、消費者が加入したコミュニティー情報、SNSの活動内容、インターネット接続時間など、さまざまなデータを活用。顧客の信用度を評価・融資する事業を展開している。同社は、ローン申請者のスペリング能力などひとりあたり約1万項目のデータを活用。信用判定技術を向上させている。香港の「レンド」(Lenddo)も、個人の適正やSNS活用程度、通信記録など各種行動パターンを複合的に分析した信用評価モデルを開発。世界約20ヶ国に進出を果たしている。

データの信用判定が成果を出すにつれ、保険・金融分野における人工知能&ビックデータの活用はさらに広がっていくはずだ。市場調査会社IDCによれば、世界のビッグデータ市場規模は2015年1220億ドルから、2020年に2100億ドルまで70%成長する見通しである。

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