中国Baidu(百度)が中国農業銀行とフィンテック業務で提携…農村部の金融サービス強化へ

出水鴻正2017年6月24日(土曜日)

 6月20日、中国ポータル大手の百度(Baidu)と、中国四大銀行のひとつ中国農業銀行が業務提携を発表。共同で「金融科技連合研究所」を設立する。同研究所は、中国農業銀行のインターネット金融部門と、百度の金融サービス部が中心となって、人工知能(AI)を駆使した金融サービスの可能性を研究するために設立されたものだ。

 今回、共同研究する具体的な内容については多岐の分野に及んでいる。金融分野における科学技術レベルの向上、金融に関する深い理解、顧客の画像データ管理、顧客への正確な情報提供、リスクヘッジ、人工知能を使った顧客への投資アドバイスやサービスなどなど。

 フィンテックのエンジニアとしても知られる中国農業銀行の李彦宏氏は、「これまで金融界で行われてきた電子化やネットによる金融取引などは、今後、人工知能技術によってさらに進化したものになる」と述べ、金融界は今後、「AIフィンテック」の時代を迎えるだろうと予想する。

 すでに百度の金融事業部門は2015年6月に、同じく四大銀行のひとつである中国銀行と戦略的提携関係を結び、中小企業への金融賃貸サービスを開始している。また個人への融資業務を提供するため、2017年1月に大手の中信銀行(国務院傘下のグループ企業)と提携し、独立法人を設立して民間銀行を設立し始めている。

 これまで、阿里巴巴集団(アリババグループ)や騰訊(テンセント)、小米などの大手IT企業が続々と銀行業に参入し、民間銀行を設立している。とくに、SNSサイトを運営する企業が民間銀行を設立する際には、多くの資本金が集まるという特徴がある。百度が金融業に乗り込んだ時期は、比較的遅いタイミングであったのにも関わらず、人工知能という、新たな可能性を掲げ参入してきたことで、大きな注目を集めることとなった。

 百度の幹部である朱光氏は、「金融業界は、人工知能技術にとって非常に重要な分野。様々なデータやアルゴリズムを組み合わせることで、新たな可能性を生み出せる。百度の先端テクノロジーで、新しい金融の未来が見えてくるのです」と語り、今後は百度が新たな金融の未来をもたらすことを会見の場で宣言した。また、同氏は百度が金融業を行う上でのキーワードとして、「顧客への対応サービスの質を高めること」「金融サービスを提供するにあたりプラットホームの設立」「金融業における科学技術のさらなる飛躍」の3つを掲げた。

 百度の金融部門の挑戦はまだ始まったばかりで2018年1月より本格的に始動するという。サービス開始にあたっては、まず顧客獲得、ID識別、ビッグデータによる金融リスクヘッジ、投資アドバイスを人工知能を利用して行っていく予定だ。朱光氏は、百度の金融科学技術レベルについて、計算能力、人工知能による計算、ビッグデータの分野においては世界の先端レベルにあり、今後は顧客画像・音声識別・画像識別などを組み合わせた新たな金融サービスを開発中だという。

 百度と中国農業銀行が共同で開発を進めるサービス「金融小秘書」については、実際にデモを行い、顧客がスマートフォンを使用し顔認証によって、IDチェックを行うシステムについて説明。今後の展望として、人工知能などの先端技術を使用し、多くの人々が平等な金融サービスを受けれるようになることが目標としている。中国の農村などでは、金融サービスとは無縁な人々もまだまだ多いが、人工知能によるビッグデータ解析や機械学習が進めば、そのような人々にも今後、金融サービスを提供できる可能性が広がるだろう。

 百度のライバルであるアリババグループはすでにネット金融サービス「蟻金融」を軌道に乗せている。百度が今後、この分野でパイオニア的存在となるには、更なる努力が必要となるだろう。

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