中国バイドゥの絶対的地位に暗雲…挽回策は人工知能?

ロボティア編集部2016年9月29日(木曜日)

 中国のIT業界の大手3社は「BAT」と呼ばれる。それぞれバイドゥ(百度:Baidu)、アリババ(阿里巴巴:Alibaba)、テンセント(騰訊控股:Tencent)社名の頭文字からとって付けられている。

 これまでバイドゥは、中国の検索エンジンでほぼ独占的な地位を確立してきた。しかし最近はさまざまな問題で、その絶対的な地位に暗雲が立ち込めている。

 今年8月半ば、参考消息網が伝えたところによると、香港証券取引所でのテンセントの株価は、時価総額が2490億ドル(約25兆1100億円)となり、アリババの2460億ドル(約24兆8000億円)を上回ったという。両社は長らく熾烈な競争を繰り広げている。

 このような状況で、バイドゥは両者に遅れをとりはじめている。時価総額646億ドルに過ぎず、また事業のいたるところでトラブルも目につきはじめた。

 サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)は今年、アリババのデジタル広告の売り上げが120億5000万ドル(約1兆2050億円)に達する見通しだと報じた。これは中国の広告市場全体416億6000万ドル(約4兆1660億円)のうち28.9%を占める勢いだ。対するバイドゥの業績は、昨年には市場占有率28%と、業界1位を占めていたが、今年のデジタル広告の売り上げがたったの88億7000万ドル(約8870億円)にとどまり、市場シェアはわずか21.3%となる見通しだ。

 さらには、中国商務省の制裁も影響している。今年5月、癌にかかった大学生がバイドゥに広告が掲載された病院で、不適切な治療を受け死亡する事態が発生した。バイドゥは早急な対応で事態収拾に乗り出したが、世論の批判は瞬く間に広がり、ついには政府も制裁に動いた。これによって、事業の先行き懸念から株価が急落した。

 またクレディ・スイスの調査によると、アリババの金融部門、アント・ファイナンシャル(䴶蟻金融服務集団)が運営する決済アプリ・アリペイは、中国のネット決済マーケットシェアの58%、テンセントは20%を持っており、2018年にはそれぞれ59%、25%にシェアを拡大すると見込まれている。一方でバイドゥの決済アプリ、バイドゥウォレット(百度銭包)は中国のトップ5にも入っていない。

 加えて、O2O(Online-To-Offline)市場でも苦戦している。先月、中国の配車サービス最大手のディディチューシン(滴滴出行)は、同業の米ウーバー・テクノロジーズの中国事業を買収することで合意したと発表した。元々ウーバー・テクノロジーズにはバイドゥが出資を行ってきた。

 ほかにも、O2O市場でバイドゥが意欲的に推進していた事業は、軒並み苦戦をしいられている。 一方テンセントは、モバイルメッセンジャー「ウィチャット」をもとに、決済インフラやアプリまで追求するなど、特別な存在感を見せており、依然として市場をリードしている。中国の専門家やメディアからは、中国ネット企業の御三家として走ってきたバイドゥの急失速は、トップ企業からの陥落を意味するのではないかとの懸念もあがっている。

 一方でバイドゥは近年、人工知能の開発に注力してきた。地元の自動車メーカーと協力して、人工知能搭載型の自動走行車プロジェクトにも積極的に乗り出しており、同じく人工知能搭載型ロボットであるドゥミ(度秘)開発にも一層拍車をかけている。

 これに先立って、2014年には米シリコンバレーで、200人余りの研究員を獲得しておよそ3億ドル(約300億円)を投資した人工知能研究所を設立している。昨年12月には自動走行車の走行に成功しており、画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディア(NVIDIA)とも協力している。

 当時、エヌビディアの自律走行コンピューティングプラットフォームと、バイドゥのクラウドプラットフォーム、マッピング技術の融合が注目されていた。さらなる人工知能の開発によって業績、信頼共に挽回なるか。これからのバイドゥの動きに注目が集まりそうだ。