人工知能(AI)やロボット、IoT、ドローンなどハイテク分野の開発・研究で今や中国はアメリカを抜こうとしている。中国メディア「参考消息網」(6月6日付)は、「米メディアが憂慮:将来アメリカが中国の技術を盗む時代になる」と題する記事を掲載している。
同記事によれば、「Newsweek」(米国電子版6月1日付)で、「中国が人工知能の未来を握る?」と題した論説を掲載したことについて報じ、すでに技術力は中国が優位に立ちつつあり、アメリカとの差は僅かしかないとしている。
中国が巨額の資金を投じて人工知能技術などハイテク分野に力を入れている一方で、アメリカ政府は同分野の予算を削減しているのは本サイトでも既報の通り。トランプ政権では人工知能研究に対する経費を1割近く削減することを目指しており、予算額が1.75億ドルになるとしている。アメリカ議会は、保守やリベラルを問わず、ハイテク分野に政府が予算を捻出することは当然だと考えており、トランプ政権のこうした予算削減策に反対だ。しかし、実際のところ、科学技術分野への支出は現在と1960年代の頃とを比べると、当時の3分の2ほどとなっている。
トランプは大統領選の最中から、ハイテク分野に関する政策にはほとんど触れず、中間層の労働者を取り込もうと、旧来型の産業である鉄鋼や自動車工業を強固にすることに熱心だった。“アメリカ・ファースト”には、ハイテク分野は含まれていないのだ。
前掲「参考消息網」によれば、トランプ政権で予算編成を行う一部の保守系議員も、効率が低いと考える分野への投資は行わないほうがいいと考える傾向にあるという。一方で、民間企業による投資は中国よりアメリカのほうが進んでおり、例えばGoogleの親会社であるAlphabet社長のエリック·シュミット氏は、ハイテク分野に関わる市場規模は米国で7000億ドルにものぼっており、「会社として最も重要な研究分野として考えているとしている」と述べたと紹介している。
同記事ではまた、エリック·シュミット氏が以前、米紙「ワシントン・ポスト」に寄せた記事の中の一説に触れ、中国の技術力がアメリカよりも優位に立っていると伝える。
<アメリカが独立戦争後に生み出してきた奇跡的で素晴らしい機械の数々は、公共投資と個人のような一般投資の上に成り立っている。もし公共投資が科学技術への投資を止めてしまうなら、次世代の科学技術・工業・軍事は最終的に他の国や地域によって開発されてしまうかもしれない。(中略)かつてソ連は、アメリカを凌ぐ発明技術や商業能力があった。今、中国とアメリカはその当時と同じ状況にあり、中国はハイテク分野のリーダー的存在となりつつある>
このような発言を受け、“パクリ国家”“コピー天国”と揶揄されてきた汚名を返上できるかもしれないと中国メディアは考えて始めたようだ。アメリカを始めとした“先進国”が、ハイテク分野で中国の技術をパクる日は果たしてくるだろうか?
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