日本では昨今、煽り運転など交通マナーへの関心が高まっている。一方、事故が起きた際に保険会社が行う交通事故の過失判定(過失割合の見定め)を取り巻き、その恣意性や不正確性、ユーザーとの利害不一致が問題となることがしばしばだ。そのような背景の中で、交通事故が発生した際の状況を撮影したカメラ映像を人工知能(AI)で分析し、事故の過失を判定するシステムが世界各国で開発され始めている。
12月24日には、光州科学技術院(GIST)機械工学部イ・ヨング教授ら研究チームが、AI技術を利用した「交通事故過失評価システム」を考案したと発表した。同システムは、人間が事故の過失評価に介入しない点が大きな特徴になっている。AIが過去のデータを学習し過失を独自に判断していく。
なお、同システムは人間の手間を最小限に抑えるため、AIネットワーク学習にラベリングなど加工されていない動画原本データをそのまま使用することができる。複数のデータを保有する企業は、追加の費用なしにネットワークを活用することができるという利点がある。イ教授は開発されたシステムが、AIを使った映像-法律分析技術の基礎になることに期待しているとしている。
研究チーム今後、車対車の交通事故の他、人と車、二輪車など、さまざまなケースの事故分析に応用できるようAIネットワークの機能を拡張させる計画である。加えて、開発されたシステムを採用したスマートフォンアプリケーションで開発し、事故後すぐにユーザーが過失割合を判定できる環境を構築していく予定である。
日本では、損保ジャパンなど保険会社が、自動車事故の過失割合をAIで自動算出するシステムを導入するとしている。判定を円滑化し、保険金の支払いも迅速になるとの触れ込みである。ただ、SNSなどでは損保ジャパンの事故対応や過失割合の判定、また未払いなどを問題視する声が高まっている。もともと判定を行ってきた保険会社がAIシステムを導入(過失割合の自動判定)することすなわち、そのような顧客と葛藤がある状況を固定化したり、責任逃れのための“言い訳”にもなりうる。
交通事故の過失判定を行うシステムは、第三者や弁護士、また研究機関、警察などの協力のもと開発される方が、本当の意味で“交通事故の課題解決”に資するのではないだろうか。
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