視覚障がい者用のAIプログラムを作った韓国の高校生が政府にチクリ...その内容とは

ロボティア編集部2018年9月11日(火曜日)

みなさんは、18歳の夏の夜をどう過ごしただろうか。

韓国では、18歳の高校生が視覚障がい者のために歩道と車道を区別する人工知能(AI)プログラムをつくったとして、エンジニアの間で話題となっている。開発したのは韓国・京畿道に住むキム・ユンギさんだ。

キムさんは、画面を認識するAIで視覚障がい者を支援する方法はないかと思い立ち、すぐに行動を起こした。開発ツールには、グーグルが2015年に公開したテンサーフロー(Tensor Flow)を使用した。開発までにかけた時間は18時間だった。自転車に乗ってスマートフォンで撮影した映像をAIに学習させ、車道と歩道を区別させつつ音声で知らせる機能をつくった。初期バージョンはまだまだ不完全だが、それら方法で人工知能を学習させた際のスピードが想像以上に速く、熟練したエンジニアたちも驚いているという。

韓国人工知能研究のAIビジョン研究担当者イ・グァンフイ博士は、短い開発期間にしては精度が高いと評価。意味単位で物事を区別してくれるセマンティック分割技術を使えば、より正確なプログラムを開発することができるだろうと助言している。また、社会的にAIの必要性が高い障がい者のための技術を開発したという点だけとっても、発想が非常に豊かだと賛辞を贈った。

キムさんは9月10日、韓国国内のAIエンジニアの集まりである「テンサーフローKR」に関連映像をUP。その後、登校時間と昼食時間に大手紙にインタビューを受けている。その際、「人工知能には見る能力があるのに、なぜ視覚障がい者のために使われないのか不思議だった(中略)ふとアイデアが浮かんで夜通しつくった。人間の人生を支援できるプログラムをつくりたかった」と、開発動機について語っている。また、次のような辛辣な批判も語った。

「韓国では個人がビッグデータを使用したいと思っても、企業や団体でなければ提供を受けるのが難しい。(過去に)韓国料理のビッグデータを活用してアプリの開発をしたかったが入手できなかった。政府は第4次産業革命をしようと言ってはいるものの、実際のやっていることは多くないと感じた」

実際、各国政府・企業は人工知能の利活用の可能性を叫びながらも、「次世代の石油」とも称される「ビックデータ」の囲い込みに必死だ。18歳の高校生に対して「まだまだビジネスや政治を分かっていない」という批判も聞こえてきそうではあるが、言っていることは至極正論である。優秀で前途ある若者たちを巻き込み、社会的に役立つ人工知能の開発スピードを速めるためにも、データ利用のオープン化はこれ以上にない大きな課題となりそうだ。

Photo by Kim Yungi

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