ホーキング博士の警鐘「人工知能が最高か最悪か誰にも分からない」

ロボティア編集部2016年10月21日(金曜日)

 イギリスの宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士は、強力な人工知能の開発が、人類にとって、“吉とでるか、凶とでるか”誰にも分からないと指摘した。

 ホーキング博士は19日、ケンブリッジ大学リバーヒューム未来知能センター(Leverhulme Centre for the Future of Intelligence =LCFI)のオープニングセレモニーに登壇。「強力なAIの登場は、人類にとって最高にもなりうるし、最悪にもなりうる(中略)私たちはどちらになるか分からない」と自らの考えを披露した。

 ホーキング博士は、人間の生活のすべてがAIに置き換わっていくはずであり、AIの開発は人類史でもっとも大きな事件だとした上で、次のように語った。

「私たちは過去を研究するために多くの時間を費やしており、率直に言ってこれはほとんどの愚かさの歴史。人々が、その代わりに知能の未来を研究することは、歓迎すべき変化だ(中略)人工知能を生み出すことで、訪れる潜在的な利益はとても大きいだろう。私たちの考えがAIによって増幅された時に何が達成できるのか、私たちも予測できない」(ホーキング博士)

 ホーキング博士はまた、「この新しい技術革命の手段で、私たちはこれまでの技術革命で起こった、産業化に伴う自然界の破壊を回復することができるかもしれない(中略)私たちの目的は、病気と貧困を根絶することを目的とすることになるだろう」と、人工知能の肯定的な面を指摘した。

 一方、「(人工知能が)強力な自律兵器になったり、少数が多数を弾圧する新しい手段になる危険性がある(中略)それらは、人類にとって大きな支障となるだろうし、また将来のAIは私たちの意志と競合する独自の意志を育む可能性がある」と警告した。

 ホーキング博士はこれまで、人工知能が自ら進化・人類に反する目的を持つようになることや、各国が人工知能を軍事的に活用することについて危機感を表明してきた。世界各国の人工知能の専門家からは、そのような指摘は「正しくない」との反論も出始めているが、議論は平行線を辿っている状況だ。

 リバーヒュームセンターは、そんな人工知能の潜在的なリスクと、課題を研究することを目的に設立された。ケンブリッジ大学のほかオックスフォード大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、カリフォルニア大学バークレー校などが参画する。人工知能が世界をどう変えるのか。世界の知識人たちが、本腰を入れて研究を始めようとしている。

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