ULCロボティクス(以下、ULC)は、インフラ点検用ロボットおよびシステムを開発する企業だ。現在、ULCは米国で3台(ボストン1台、ニューヨーク2台)、英国で2台のロボットを運用中だという。ULCが提供しているロボットおよびシステム「シスボット(Cisbot)」は、道路の下にあるガス管を点検・修理する役割を担う。本来、老化したガス管を点検するためには、長時間にわたって道路を関連機材で占有したり、交通を遮断しなければならない。ULCは、その点を解消するため特化したサービスを展開している。
現在、ULCは「ナショナルグリッドPLC(英ウォリックに本拠を置く送電およびガス供給事業者)」とサービス契約を結び、ガス導管の点検作業を行っている。最近、エネルギー関連企業はインフラ点検・保守のために「ロボティクス・アズ・ア・サービス=RaaS」を採用する傾向が増えているというが、ULCもロボットシステムを“サービス”として提供するRaaS事業者のひとつだ。
ULCのロボットパートリーダーであるジェイ・ファビアン(Jay Fabian)氏は「RaaSは設備投資の観点から意義が大きい」と話す。
「ロボットの動作との継ぎ目を接合するプロセスは、高度に専門化されている。パイプラインの使用寿命を延長するためには、(ロボットの)使用方法を熟知したオペレーター必要です」(ファビアン氏)
シスボットを運用するスタッフは、航空機パイロットやロボット専門家など、ロボットを活用した現場経験が豊富な人々だ。インフラ点検にロボットを使う際には高度な技術が必要とされるが、ULCではそのための徹底した訓練が行われているという。
ファビアン氏によれば、現在ULCは「一日に4〜5本のパイプの継ぎ目を点検する」と言う。シスボットには4つの車輪、穴を開けるためのドリル、6台のカメラ、マイクなどが搭載されている。点検作業は、ふたりひと組のオペレーターによって行われる。オペレーターはトラックに待機しながら、シスボットの運用状況をリモート制御。プロセスを進めていく。トラックに備え付けられた画面には、ロボットから送られてきたカメラのデータ、位置情報などが表示される。点検作業が順調に行われれば、一度の作業でパイプの寿命を50年延長させることができる。
ULCは継ぎ目の接合をチェックしたリストなど、修理した部分のデータを記録しグラフなどレポートにまとめる。それら各種記録や資料は電力会社に送信されるのだが、並行してアプリケーションで分析される。分析されたデータは、以降のロボットサービスに活かされる仕組みだ。
なおロボットを使ったインフラ点検サービス、言い換えればRaaS形式のインフラ点検サービスには、現場レベルの課題があるともいう。そのひとつに、人間の集中力の問題がある。プロセスが自動化・デジタル化されれば休みなく長時間の作業が可能になるが、機械に付き合うオペレーター側の集中力や忍耐力には限界が露呈してくるというのだ。ファビアン氏によれば、点検ロボットの設置や解体時間まですべて含むと作業時間は12時間におよぶという。その間、オペレーターはトラックに座って作業し続けなければならない。
ロボットをサービスとして展開する事業者にとっては、人間とロボットの連携をどう取るか、作業時間、人員配置を含む最適なオペレーションをどう組むかなど、戦略面での熟考が必要となっているようだ。
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photo by ULC HP