米英で深刻化する看護師不足...ロボットは人間に替わることはできるか

ロボティア編集部2019年8月30日(金曜日)

一定の資格を持つ看護師が不足している英国。その課題を解決しようと、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London、以下ICL)では、高齢者や障害者を支援するロボットを開発している。海外各メディア詳細を報じた。

ロボットプラットフォーム「Baxter」の変形バージョンである同ロボットには、ふたつのアームと、アニメーションで表現された顔が備えつけられている。また人の動作を検出するセンサーが搭載されている。

ICLの研究チームは、高齢化が進むなか看護人材不足であるという統計を調査後、Baxterの改良バージョンを生み出す必要があると判断。同校のYiannis Demiris教授は、人々が自立的に生活できるよう支援する技術の必要性が増しており、技術の実現によりプライバシーや尊厳という根本的な欲求を満たすことができるだろうと研究のミッションについて語っている。

開発されたモデルは、従来のBaxterより人間の動作を読む能力が向上させ、着付けなどのタスクを支援すること目的とする。科学者たちは3Dプリンティングで「指」を製作。器用さも向上させたいとしている。

ロボットは患者の動きを分析して、移動が困難どうかを分析する。仮にシャツを着るのに手間取っている患者がいた場合、自分の位置を調節。利用者が服を着るのをサポートする。Demiris教授は、ロボットが支援をパーソナライズしたり、患者のメリットを最大化するためには、助ける対象となる人々の好みや能力について学ぶ必要があるとする。

英国と同じく、米国も看護師不足に苦しんでおり、移民排斥が進めばさらに問題は深刻化するとの予測もある。というのも、米国の直接看護職員の4分の1以上が米国生まれでないという統計があるからだ。

ICLの生活支援ロボットは研究段階にあり、まだ商業化に向けた実験は始まっていない。Demiris教授は、ロボットが人間に対して完全に安全であることを確認するテストを行っている最中だとしている。

英国の高齢者福祉団体「Age UK」のCaroline Abrahams氏は、技術は治療の精度や効率性を高めてくれるだろうが、完全に人間の力を代替することはできないとしている。ロボットに期待は寄せるものの、必要性を満たすレベルにそれほど早く達することはないだろうと懐疑的な意見をメディアに語っている。