ウェアラブル元年とも言われた2015年以降、身体に密着させて使用するタイプのウェアラブルデバイスが続々登場している。例えば音楽再生から健康モニタリングまで多種多様な機能を搭載したAppleウォッチはその最たる例だ。その他にも、リアルタイムの紫外線量を測定したり、声によるスマホ操作を実現可能にしたりするウェアラブルデバイスがすでに存在している。
IT系調査会社IDCジャパン株式会社は2017年7月、2021年のウェアラブルデバイスの出荷台数が2017年比で2倍近い2億4010万台に達するという予測を発表。急成長が見込まれているウェアラブルデバイス市場だが、米国に拠点を置く市場調査会社トラクティカ(Tractica)が提出した最新の報告書によると、ウェアラブルデバイスのうち特定の分野においては予想よりも緩やかなスピードで成長していく見通しだという。
同社はスマートウォッチ、スマートグラス、フィットネスグラス、スマート衣類、身体センサー、ウェアラブルカメラ、スマートヘッドフォンなどのウェアラブルデバイスを対象に、2016年から2022年までの出荷台数や収益を予想。調査に際し、世界の地域ごとのウェアラブルデバイスの出荷台数・収益、消費者や企業、パブリック・セーフティ、ヘルスケア、スポーツに特化したアプリの市場動向、コネクティビティ・テクノロジーに関わるデータを参照した。
2022年のウェアラブルデバイスの年間出荷台数は4億3000万台になる見込みであるという。2016年の年間出荷台数は1億1800万台であり、2022年まで毎年24.1パーセントの成長率で出荷台数を伸ばしていく計算になる。
ウェアラブルデバイス市場において大きなウェイトを占めるとされるのが、スマートウォッチやフィットネストラッカー、それから身体センサーだ。そのうちスマートウォッチやフィットネストラッカーは依然としてウェアラブルデバイス市場を牽引していくものの、成長スピードは予想よりも遅くなるだろうと同社は示した。
一方で、パッチ型の医療用機器に代表される身体センサー分野がウェアラブルデバイス市場の成長の駆動力となり得るそうだ。
トラクティカのリサーチディレクターを務めるアディティア・カウル(Aditya Kaul)氏は、「ヘルスケアおよび健康に特化したウェアラブルデバイスが今後市場を牽引していく。特に糖尿病や心疾患などの慢性的な病気・症状の予防・管理を視野に入れたウェアラブルデバイスメーカーが業界を制し、長期的な成長を遂げるだろう」とコメントした。
米国とベルギーに拠点を置くウェアラブルデバイス系スタートアップ、Byteflies(バイトフライス)は16日、製薬メーカーの世界大手、ユーシービー(UCB)と業務提携を締結。
手首などに装着し、光電式指尖容積脈波や心臓の電気的活動、呼吸、動き、皮膚・筋肉電気的活動などを測定可能な製薬企業および医療機関向けウェアラブルデバイス「センサー・ドット(Sensor Dot)」に関し、てんかん患者の発作的症状への臨床応用の可能性を探るべく、今回の業務提携へと至った。
従来、てんかん患者の発作的症状を測定することは困難であるとされてきた。ウェアラブルデバイスとしての身体センサーが未知の領域に参入し、診断・治療の可能性を開拓していくプロセスに注目したい。
photo by Byteflies