ロボット税をめぐる論争が拡大傾向にある。論争の趣旨は、ロボットや人工知能の普及による高度な自動化による、雇用消失、および所得の不平等拡大を防ぐため、産業現場に導入されたロボットに税金を課す必要があるというものだ。
英メディア・フィナンシャルタイムズは21日の社説で「(ロボット税の)新しいアイデアを緊急に模索する必要がある」と主張している。「奇妙に聞こえるかもしれないが、ロボット税には一理ある」としたその社説は、「過去の産業革命は、社会的激変をもたらしたが、長期的には全体の雇用水準を変えはしなかった。政策担当者は、次のステップの自動化もまた、(雇用数に)問題がないことを証明しなければならない」と指摘している。
最近では、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も、ロボット税の議論に参戦している。ビル・ゲイツ氏は17日、オンラインメディア・クオーツのインタビューで、「年俸5万ドル以上をもらう工場労働者は、収入から所得税、社会保障税などの税金を支払う。ロボットが同じようにお金を稼ぐなら、同レベルの税金を課すこともできるだろう」としている。
つまり、人と同じ水準の税金をロボットに課すのであれば、企業側がロボットを導入するメリットが減り、自動化の速度をおしとどめることができ、なおかつ納められた税金で失業者や低所得者などのための福祉サービスに投資することができるというアイデアとなる。
ヨーロッパでも、ロボット税と関連した議論が深化していく雰囲気だ。例えば、ファイナンシャルタイムスは22日、イギリスの政策担当者が、ここ数年の国民の税負担の高まりを受け、公共財政に使える新しい財源を探していると伝えている。フィナンシャルタイムズはまた「英国政府は健康保険と福祉サービスのために、今後、数百万ポンド(の財源)を見つける圧力に直面している」とし「財政研究者が、法人税や所得税などの税金を削減して、『あまり注目されない増税』を行うことを提案した」とも伝えた。
一方、フランス与党・社会党の大統領候補ブノワ・アモン氏は、所得不均衡と雇用減少の解決策として、すべての国民に毎月600~750ユーロ(約7万~9万円)を支給するベーシックインカムを実現し、そのコストをカバーするために自動機械装置の使用で創出される富に税金を課す「ロボット税」を導入すべきとしたことがある。これは、自動化の拡大がロボット所有者や企業の利益を育くむ一方、労働者の雇用と収入を奪うという認識に立つものだ。
自動化が格差の要因になりはじめている科学的データは、世界各国の学者たちから徐々に発表されはじめている。もちろん反論も少なくない。が、今後ロボット・AIの普及とともに自動化がさらに進むにつれ、関連研究は増えて行くはず。ロボット税が実現するか否かは、それら研究成果とともに加速していく可能性が高く、併せて注視する必要がありそうだ。
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