急増する医者のうつ病「燃え尽き症候群」にデジタル治療プログラムを試験導入

大澤法子2017年9月1日(金曜日)

 米カルフォルニア州およびフィンランド・ヘルシンキに拠点を置くヘルスケア企業、メルヘルス社(Meru Health Inc.)は24日、医師のうつ病やバーンアウト(燃え尽き症候群)対策としての8週間のデジタル治療プログラム「メルヘルス・アセンドTM(Meru Health Ascend TM)」の試験的導入を前提に、米シュターヘルスグループ傘下の医療系NGO団体、パロ・アルト・メディカル協会(Palo Alto Medical Foundation=PAMF)と業務提携を締結した。 

「メルヘルス・アセンドTM」とは、元々自家保険制度を採用する企業の雇用者向けにメルヘルス社が考案した治療プログラムである。うつ病やバーンアウトに悩まされる医師にも適用すべく、今回の業務提携に至った。同プログラムの試験的導入に際し、うつ病やバーンアウトを発症した30名の医師が被験者として参加予定となっている。 

 生体データや行動データ、自己報告データを組み合わせ分析する独自のアルゴリズムが、スマートフォン上で完結するオンラインスクリーニング検査で得られたデータを精査し、その後常駐の医師が心理療法士による介入が必要かどうかを判断する。必要に応じて、メルヘルス社所属の心理療法士による介入が開始される。認知行動療法やマインドフルネス、行動活性化療法などのエビデンスに基づく心理療法を受けたり、匿名性のソーシャルネットワークで相談したりしながら、8週間のプログラムでうつ症状が改善されるようになっているという。 

 米国では、医師のうつ病やバーンアウトが深刻化している。バーンアウトは俗に「燃え尽き症候群」とも呼ばれ、精力的に活動していた人が突然無気力になるケースを指す。医師の54パーセントがバーンアウトの症状を抱えていること、研修医の29パーセントに重いうつ症状が見られること、さらにうつ症状のある研修医はうつ症状がない研修医に比べ、1人当たりの医療ミスの発生件数が6.2倍であることが、米メイヨー・クリニックの調査により裏付けられている。 

 同社は今後、以上の治療プログラムが医師のうつ病やバーンアウト対策に臨床的に有効性かどうか、治療プログラムへのアクセスは容易か、スムーズにシステムが動作するかを判断し、本格運用を検討する。 

 医師のうつ病やバーンアウトは日本でも顕著だ。日本では特に医学部を卒業したばかりの1年目の研修医がうつ病やバーンアウトを発症する傾向にある。致命的な医療事故を回避するためにも、医師のうつ病やバーンアウト対策は必須になりそうだ。

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大澤法子

記者:大澤法子


翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。人間同士のミスコミュニケーションに対するソリューションの担い手として、ロボット・VRなどがどのような役割を果たし得るかを中心に追及。

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