リクルートテクノロジーズATL・米谷修所長に聞くVR×オープンイノベーションの真意

-ATLでは今後も、明確な結果を意識せず、何でも自由に挑戦しようということでしょうか。

 その通りです。非常に曖昧模糊としていますが、まだ形になっていない“何か”を生み出すことがATLの使命だと考えています。それでも、ATLの業務があくまでR&Dであるという前提は揺るぎませんので、VR、ロボット、ドローン、AIなどある程度方向が見えてきた分野に、積極的に取り組んでいきたいと考えています

-スペースのオープン時に「なぜリクルートがVR施設を無料開放するのか」、もしくは「他にも話題のテクノロジーがたくさんあるのに、なぜあえてVRなのか」という点が気になっていました。

 VRについては、世間の注目や熱を感じる機会に恵まれたという経緯があります。ATLでは2016年に、視覚だけでなく聴覚や触覚も刺激する「体感型VR」の実証実験イベント「未来アミューズメントパーク」を開催しましたが、盛り上りが予想以上でした。それにVRは国内・海外問わず、無視できないテクノロジーだとすでに認識され始めている。まだ投資対効果を得られるかどうかは分かりませんが、世の中の流れがそうなら積極的に攻めるべきだと判断しました。

 またスペースを無料で開放したりと、オープンイノベーションの形態を取ったのも「時代の要請」を感じているからです。イノベーションを独り占めできる時代は終わろうとしているというのが、我々の考えです。ATLとしては、リターンも曖昧、分野も曖昧、しかし何かが生まれてほしいし、そのためのパイプラインを増やしたい。そして最終的に何か果実が実った時に、皆様とシェアしていきたいと考えています。もしかしらたら、数年後、「オープンイノベーションは違ったな」と言っているかもしれませんが(笑)。今は最良の選択だと信じています。

-ATLでは、VR以外の分野でもオープンイノベーションスペースを開放する計画があったのですか?

 本当はVRの前に、ロボットやりたいと考えていました。ただ、震災の影響で実現できませんでした。ロボットを一緒につくってもらおうとした企業はみな、防災・災害用ロボットの受注が多く現時点では難しいと。タイミング的には、2015年頃のことだったと記憶しています。それでも、いずれロボットの研究・開発に焦点を当てていきたいと思っています。例えば、ペッパーの改善はぜひやりたり。ペッパーは、プラットフォームとしてすでに魅力がたくさんあるのですが、まだ引き出せていない潜在力も大きいと考えています。

米谷所長は、ロボットのどのような部分に潜在力を感じてらっしゃいますか?

「ヒューマノイドロボットの権威である大阪大学の石黒浩教授とたびたびお話させていただく機会があったのですが、その過程でロボットがビジネスにもたらす効用は非常に大きいと考えるようになりました。とあるデパートに設置された石黒教授のロボットは、約30人のスタッフの中、上位の販売実績を誇ると言います。しかも、売っている商品がわずか4つほど。ロボットの価格自体は非常に高価な面もあるのですが、集客力・販売力という側面では秀でていると実感しました。物販以外でも、介護など様々な分野で力を発揮できると思います」

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。