(本稿は急速発展する中国最貧エリア・貴州省[vol.2]の続きです)
次の日に向かった場所は、「渓雲小鎮」というインキュベーションセンター。ここは、深センで投資を行っている「沸騰VC」が運営している。
既に入居者もいて、一定の条件を満たせば家賃はタダ、光熱費のみを負担で利用できるとのこと。ここに入っている企業は名刺交換してみると広州や深センの会社が多く、彼らは既に沿岸部から貴陽に進出している。その中でも元々貴陽出身で沿岸部にいたが、戻ってきた人もいる。
この場所は隣に大学城があり、いくつかの大学が入っているので、学生のスタートアップや卒業後に起業する人には良い環境である。他にもブロックチェーンを使った絵画などの版権を管理するシステムを作っている企業も入っている。ここにも世界初の~と書いてある。
ここに入居している人たちにインタビューしてみたが、その中でもビッグデータを活用した旅行関連の企業の話によると、「貴陽の人は昔から外に出る意識が強く、若いうちに子供を留学させたり、海外旅行に行く人が多い」とのこと。
深センのロボット企業が競技用ロボットを作っていたり、競技用FRVドローンを作っている企業もいる。この企業の紹介が展示されていたが、ドローンの写真の背景が山と河など田舎の風景になっていて、深センで見るものとは対照的な画像になっている。
ここは外に出ると向かいに観光地である十里河灘という川があり大自然も近くにある。これも深センにはない環境で、大自然とイノベーションの融合である。
ブロックチェーン関連企業は既に30社ほど貴州進出を果たし、ブロックチェーン技術イノベーション及び応用についての施策を出しており、既に土台が出来上がっている。
現在、この場所にいる人の多くは、もともと貴陽出身であり都会から戻って来た人であるが、全く別々の場所から来る人も増えており、今後は現地での人材育成も重要なポイントになってくるだろう。
その次に訪問したのは空港近くに建設中のVRテーマパーク『東方科幻谷』があり、ここの投資規模は100億元(約1700億円)。5月に開園予定とのこと。
入り口を抜けるとお台場のガンダムより大きなロボットがお出迎え。オープンするとロボットに登れるという。
いくつかのアトラクションを体験させてもらったが、なかなかクオリティも良い感じで、深センにある10秒で酔ってしまうようなものよりは良いといった所。しかしまだまだコンテンツ不足のような感じであった。
ドローンで空撮した観光地を巡るアトラクションもあり、うまく貴陽観光と繋げているのは面白い。
ここもそうだが国内初めてのVRテーマパークと書いてあり、この国内初めてというのは今回の視察でよく出てきたワードである。これは最貧省であった場所が、まず最初にやる!という意気込みが強いように感じた。とにかく1番を取るという所に貴州としては重点を置いているのかもしれない。
街中を見るととにかくビッグデータという文字が目につく。国を挙げているなら当然であるが、人材育成等のためにも一般市民への印象づけなどもあるのかもしれない。
現在貴陽市は地下鉄がなく、移動は公共バスかタクシーで、現地の人はバイクなどを使っている。外から来た人にとっては不便である。現在は地下鉄建設中でこれができると圧倒的に交通の便が良くなる。
まだ交通インフラの整ってない状態ではあるが、急速発展をしているところを見ると昔の深センに重なる部分もある。
2日間色々と見て回ったが、今すぐここに来て何かをするには少し早いかなと感じた。ある程度形は出来上がっているが中身がまだ追いついていないような感覚である。
それでもビッグデータ領域やブロックチェーン関連企業は一部が早くからここに来ている。
貴陽が思ったよりも発展していて、可能性は秘めてる雰囲気は十分にあるので、今後もこの場所には注目していきたいと考えている。
まずは交通インフラが整ったころが良いのかもしれない、地下鉄が開通するのがいつになるか、今後の貴陽に期待したい。
【取材/文:佐々木英之】
■原文:【特集記事】貴州省貴陽視察 中国最貧省が急速発展!③
■出典:深セン経済情報