1月8日から9日深夜にかけて、多くの仮想通貨(暗号通貨)が暴落に見舞われ、その後すぐに値が戻るという現象が起きた。正確な原因は明らかにされていないが、海外情報サイト「コインマーケットキャップ」が、韓国の相場を反映しないことを決めたことに原因があると推定されている。
新年に入り韓国で上昇傾向を維持していた仮想通貨相場は、8日午後9時頃から急落。ビットコインの場合、同日1単位あたり2500万ウォン(約263万円:2018年1月9日の相場で換算、以下同)を突破したが、夜9時以降に値を下げ始め、真夜中には約2256万ウォン(約238万円)まで下落した。時価総額2位のリップル(XRP)も、同日4300ウォン(約453円)を行き来しながら横ばいであったが、深夜に入って3500ウォン(約369円)まで急落。200万ウォン(約21万円)を突破するものと見えたイーサリウム(ETH)も、瞬時に約160万ウォン(約17万円)まで下落した。
特筆すべき点は、それら暴落がわずか2〜3時間で回復したということだ。韓国の国内取引所に上場されている仮想通貨の相場は、暴落直後に再び上昇し始め、9日午前3時頃には、ほとんど前日の相場にまで回復した。
この暴落の理由については、海外の仮想通貨情報サイト「コインマーケットキャップ」が、「韓国の主要な取引所の価格を反映していないため」という説がまことしやかにささやかれている。というも、コインマーケットキャップは8日午前、公式ツイッターを通じて「今日の朝、私たちは、過度な相場の違いや制限的な取引機会のため、いくつかの韓国取引所の価格を排除することを決定した」と言及。その後、世界の他の取引所に比べて相場が高い韓国の取引所の相場を反映しなくなったため、コインマーケットキャップが中継している各仮想通貨相場の時価総額が一瞬で下落したという説である。
韓国取引所の価格は、世界の他の取引所の相場より過度に高く、韓国国内投資家の間では、「キムプ(キムチプレミアム)」と広く呼ばれている。海外・国内相場の違いを意味するキムプは、これまで約10%〜20%割高水準と推定されてきたが、今回、コインマーケットキャップが韓国取引所の相場を排除したことから、具体的な“割高度”を確認できるようになった。
9日の午後3時時点で、コインマーケットキャップが発表していたビットコインの価格は約1万5272ドル。為替レートで計算した際は約1631万ウォン(約172万円)に相当する。一方、同時間帯、韓国の国内取引所・ビットサム(bithumb)におけるビットコイン1単位あたりの価格は約2320万ウォン(約245万円)だった。海外相場より約42.2%高く、これまで推定されてきた韓国プレミアムの約二倍に相当する。
とある個人投資家が作成した海外/韓国国内仮想通貨相場比較サイトでは、両者の差が約50%水準とも指摘されている。また時価総額上位にあるビットコイン、イーサリウム、リップル、ライトコイン(LTC)など主要仮想通貨のほとんどが、海外相場より1.5倍ほど高い価格で韓国国内で取引きされている。
このように韓国相場が高すぎる理由については、まだ明確な理由が明らかにされていないが、韓国の業界専門家らは「過度な国内投機需要」と「海外取引所との限定的な取引」に原因があるとしている。
キムプが激しい代表的な仮想通貨として知られているリップルの8日の取引量を比較すると、世界上位10位内に韓国国内取引所3つが名を連ねている。そのうち、ビットサムが1位で、1日の取引量全体の32.01%を占めており、コインワン(Coinone)、コビット(Korbit)が8.14%、5.18%を占め、それぞれ3位と5位に名前を連ねた。ビットコインの場合は、ビットサムが12位を記録しているが、日本の取引所であるビットフライヤーより2ランク高い順位である。
なおブルームバーグは最近、「世界経済規模の2%にも満たない国が、ビットコイン取引量の20%を占めている」と、韓国国内の仮想通貨投資の現況を伝えたこともある。ブルームバーグに報道された数値は若干誇張されている趣きもあるが、実際に韓国で取引されているビットコインの原価が占める割合は、全体の約4%に相当するという実情がある。リップルの場合は13%、イーサリウムも約9%であり、韓国が世界経済に占める位置を考慮すると、仮想通貨の取引で韓国の比重は過度に高い水準だ。そのような巨大な投機需要のおかげで、韓国国内の仮想通貨取引量および価格が急騰すると、海外相場に影響を与える状況に至ったとされている。
そのように韓国国内相場がバブル状態になった場合、海外市場との取引を通じて、価格のバランスが調整されるのが通常である。キムプが50%であれば、海外取引所で仮想通貨を購入した後、国内取引所で売却し、いわゆる“為替差益”を狙う投資家が多数発生するからだ。しかし実際には海外取引所と国内取引所間の取引きには多くの制約があり、常に相場が正常にバランスを取って調整されているとは言い難い。
海外取引所で仮想通貨を購入するためには、口座発行の身分確認などいくつかの手順が必要となる。写真が含まれた身分証明書をはじめ、居住地を証明することができる書類を提出してからも数日間の審査過程を経なければならない。また、韓国居住者が海外の仮想通貨取引所に入出金するため海外の銀行口座を開設することも難しい。カードを利用することもできるが、手数料の負担が重くのしかかる。海外に居住する知人を通じて送金したとしても、韓国から送金事由なしに海外に送ることができるお金は5万ドル水準だ。仮想通貨の為替差益を狙う投資家にとっては、規模が小さすぎる金額である。仮に韓国に居住する多くの投資家が5万ドル水準の取引をしたとしても、バブルにある国内相場を正常化するには資金が足りない。
海外取引所で購入した仮想通貨を国内取引所に移すとしても問題がある。送金時間と手数料だ。仮想通貨の特性上、取引時間がかからないとされているが、実際に取引を試みた韓国人投資家たちは、送受信に数時間~数十時間がかかる海外取引所の利用を控え始めているという。また海外・国内取引所で手数料を二重に負担しなければならないとなれば、う海外での取引は事実上不可能ということになる。
そのように、「高い投機需要」と「海外取引所との取引の困難さ」が、50%に達するキムプを生み出したと、現地の専門家たちは指摘している。韓国の投資筋は、取引の難しさを考慮した際には15%程度のバブルは理解できるが、現在の韓国国内相場は過度に高いと懸念を示している。しかしながら、キムプ抑制の手段がないというのが現状のようである。
過熱する韓国の相場は、日本、そして世界の仮想通貨相場にどのような影響を与えるのか。注目が必要かもしれない。
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Photo by CoinMarketCap