日本で話題をさらったAI小説...韓国では通信大手KTが公募展を開催

現在のAIのほとんどは、ある特定の問題を分析・解決する用途で開発されている。IBMの「ワトソン」や、グーグルディープマインドの囲碁AI「アルファ碁」など、世界的に注目を集めるAIは、問題解決型AIに属する。言い換えれば、人間の理性に相当する部分を担うAIだ。

一方、松原氏らが取り組むのは人間の感情の動きを理解し、再現するAI、すなわち感性型AI開発だ。世界的に見ても、ユニークかつ独創的な研究と言えそうだが、やはり興味を惹くのは、AIが小説を書く仕組み。一体、どのようなものだろうか。

「現在公開している小説については、“コンピュータの力が2割、人間の力が8割”と説明させてもらっています。つまり、人間がストーリーを与え、AIがそれに対応する日本語を選んで文章を生成する仕組みです」(松原氏)

つまり「最初に天気の話をする」「次に主人公に話をさせる」など、物語の構成や形式を人間が与え、AIがそれに適した単語を選び、文章を紡ぐということ。

現段階では、松原氏らが想定しているAIの完成像とはほど遠いものの、作家性、つまり「その作家をその作家たらしめる作品の特徴」を抽出する研究も行っている。新たなAIは、文化の領域を拡大する可能性を秘めている。

「現在、我々は星新一氏の他にも、小松左京氏の作品を分析しています。作家の作品性を抽出できれば、まるでその作家が書いたかのような作品を生み出すことができるようになるかもしれません」

松原氏と小松氏の家族は、未完の大作『虚無回廊』の続きをAIに書かせるという未来を語り合うこともしばしばだそう。これらの技術が発達すれば、将来的にはAIが読み手個人が好きな作家性・文体を分析して、カスタマイズされた小説を書いてくれる日が訪れる可能性もある。松原氏は言う。

「それは私小説ではなく、“個”小説と呼べる新たなジャンルの創作物になるでしょう」

小説を書く感性型AIは、今後、世界的にどのように発展していくのか。動向に注目したい。

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。