人工知能が既存産業に与える経済効果は年3〜5兆ドル...米マッキンゼー調査

ロボティア編集部2018年4月26日(木曜日)

コンサルティング企業・マッキンゼーが、「人工知能が年間3兆〜5兆ドルの価値を生み出す」とした報告書「NOTES FROM THE AI FRONTIER」を公開した。

報告書は、人工知能がビジネスにどう影響を及ぼすかにフォーカス。航空会社からECサービスなど19の産業分野、400の事例を分析した。結果、AIが該当産業分野で年平均3兆5000億ドル~5兆8000億ドルの経済的価値を創出すると予測した。またマッキンゼーは、調査した事例のうち69%が、ディープニューラルネットワークを活用することでより成果を向上させることができるとしている。

ただし、現在のビジネスでは売り上げが10倍などという劇的な変化がもたらされるケースはないとしている。報告書は、フォーカスした19の産業分野では、AIの影響は年間売上1%から12%程度になると推定している。

報告書は、新たなビジネスよりも、従来の製品やサービスを提供する産業がAIによって価値を創出できる方法に重点を置いた。例えば、自動車メーカーによる自動走行車のような完全に新しいAIベースの事業よりも、AIを活用して自動車をさらに発展させる方法にフォーカスしている。 新ビジネスは潜在力が最も大きいように見えるが、その動向を予測するのが難しいという実情があるからだ。

マッキンゼーが分析した産業分野のうち、AIが最も多い価値を創出できる分野は「旅行」だった。同分野では、年間売上7~12%の上昇効果が得られると分析している。その理由として、旅行会社は複雑なマーケティングや営業が必要であり、AIが各分野で価値を創出できる可能性があるからとされている。 AIが大きな影響を及ぼす他の産業としては、ソフトウェア、オンラインおよびハードウェアメーカーなどハイテク分野、運送および物流、医薬品分野が取り上げられている。 一方、公共や社会部門、石油、ガス、化学分野には影響が少ないとされている。

マッキンゼーは、昨年の調査結果を引用し「AIについてよく知る企業の中でも、約20%だけが中心もしくは大規模なビジネスプロセスでひとつ以上の技術を使用している」「訓練のための大規模なデータ確保、法律制定の脅威、そしてデータやアルゴリズムの潜在的偏向性がAI拡大の足かせ」と指摘している。