農作物の発育状況を監視するロボット「テラセンティア」登場...転移学習で知能化

ロボティア編集部2018年7月10日(火曜日)

農作物の生産者たちは、収穫量を増やし、悪天候や気候変動に耐えうる作物の開発に尽力しているが、イリノイ大学で開発された作況調査ロボット「テラセンティア」(TerraSentia)は、その困難なミッションに挑戦しようとしている。テラセンティアは、ピッツバーグで開催されたロボット工学カンファレンス「ロボット:サイエンス・アンド・システム」(Robotics:Science and Systems)で、最も評価が高いシステム論文賞を受賞した。

イリノイ大学の農業バイオテクノロジー・ロボット工学科助教授であるGirish Chowdhary氏は「世界の食糧需要を満たすために繁殖を加速する必要がある(中略)アフリカの場合、2050年までに人口が二倍以上に増加すると予想されているが、現在の収穫は潜在値の4分の1に過ぎない」と、現在の農業の状況を指摘している。世界の生産者たちは、数百エーカーにまたがる広大な土地で、数千の品種を比較する大規模な実験を実施。植物の主要な特性を手作業で測定する方法をとってきた。しかしそれら手作業はコストおよび時間がかかり、正確性があまり高くなかった。

研究論文の第1著者であり、MIT・Erkan Kayacan博士は、「植物の特性を測定するための自動化の不在は、(農業)発展の障害(中略)しかし農場は広範であり、データはベンチマークデータセットとは異なりノイズが多く発生することがある。植物を自動で測定するロボットシステムをつくるのは難しかった」と研究の背景を説明している。

テラセンティアは、幅約30cm、重量約10.8kgの、携帯可能なコンパクト自律型ロボットだ。センサー、カメラ、ディープラーニングツールなど使用して、各プラントをスキャンする。

研究者たちは、転移学習(transfer learning)という手法で、テラセンティアにわずか300枚の画像イメージを学習させ、トウモロコシのプラントを計測するようにした。共同著者である農業消費者環境科学大学(ACES)の大学院生・ZhongZhong Zhang氏は、「ひとつ難しかったのは、植物が均等に散らばっていないこと(中略)カメラのフレームにひとつの植物だけがあると仮定しては十分ではない」と説明。「私たちは、植物間の間隔が多様な実際の状況に対応するため、カメラモーションを使用する方法を開発することにより、間隔と速度を異にする多様な分野の植物を数えることができる、かなり強固なシステムをつくった」とした。

同研究は、カール R. ウォイーズ・インスティテュート・フォー・ジェノミック・ビオロジー(Carl R. Woese Institute for Genomic Biology)のTERRA-MEPPプロジェクトの一環として、ARPA-E(Advanced Research Project Agency-Energy)から支援を受けている。 TERRA-MEPPは、イリノイ大学がコーネル大学およびSignetron Inc.と協力して、最高性能の作況確認ロボットを開発する研究プロジェクトだ。テラセンティアは現在、EarthSense.Inc.を通じて購入可能となっている。

Photo by YouTube