人間と機械がテレパシーで作業!? MITとボストン大学が脳波でロボットを制御するシステム開発中

ロボティア編集部2017年3月13日(月曜日)

 米国ボストン大学とMITコンピュータ科学・人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory、以下CSAIL)の研究者たちが共同で、人間の脳波でロボットを制御するシステムを開発している。

 具体的な研究イメージとしては次の通りだ。工場などでは現在、リシンクロボティクス社のバクスターなど、人間と協業するタイプの産業用ロボット=コ・ロボットが普及しようとしている。研究の狙いは、それらロボットと人間がプラグラムを通じてではなく、より直感的、かつシンプルに繋がることだ。例えば、人間の作業監督官が工場の製造ラインもしくは作業工程のトラブルやミスに気付いたとしよう。人間の脳には、異常を検知した際に一定の脳波が生まれる。

 研究者たちは、その脳波をキャッチ。ロボットに伝え、動きを制御する方法を模索している。究極的な目標は人間の延長線上にある自然なロボットを設計すること。また、人間とロボットの主従関係ではなく、「パートナーシップ」を実現することだ。

 研究者たちは、失敗や異常を検知した時に生じる人間の脳内信号を認識できるロボットを開発するプロジェクトを、約2年間にわたり進めてきた。ボストン大学・神経科学を研究するフランク・ギュンター(Frank H. Guenther)教授は、「ロボットと人間のシームレス(継ぎ目のない)相互作用がより現実に近づいた(中略)人間が複数のロボットと容易に相互作用することができる技術」と、研究成果について説明している。

 ギュンター教授によれば、間違いを発見した人の脳内には、頭皮外部でも検できるほどの非常に強力な脳信号を生まれるという。

「異常もしくはミスを探知する行為から発生する脳波は非常に強いため、人間の頭蓋骨の外でも脳波を感知することができる。(研究している技術は)非常に安全な非侵入型技術で、人間の心を読む方法だ」(ギュンター教授)

 同ロボットプロジェクトに参加した人間のモニターはまず、脳の活動を監視・記録する脳波検査(EEG)センサーが装着された帽子を身に着ける。その帽子と連動したフィードバックシステムには、マシンラーニングアルゴリズムが採用されており、人間が異常を検知したときに生成される脳信号や脳波を、10〜30ミリ秒の精密さで分類することができるという。その後、検出された脳波や信号がロボットに伝えられ、異常やミスの修正に用いられるという仕組みだ。

およびロボットの制御という研究は、コ・ロボットなど産業用ロボットだけではなく、家庭用ロボットや企業用サービスロボットなどサービス用ロボットンにも適用できる可能性がある。ギュンター教授は、「企業においては、従業員が専用機器を装着して脳情報を送れば、ロボットがこれを検出して代わりに動いてくれる。従業員が直接動く必要がなくなる」とも述べている。

 一方でギュンター教授は、人間の脳情報を読み取るロボットの存在が人間のプライバシーを侵害するのではないかという、反対意見や懸念があることも意識している。ただ現時点では、個人情報侵害などの問題は起こらないだろうというのが、ギュンター教授の主張だ。

「ロボットの脳信号読み取りシステムには、非常に洗練された高価な装置が必要。加えて、実験に同意した参加者以外の考えを読むシステムではない。この技術は、誰でもランダムに選択して心を読むことができるのではなく、明確な目的を持って設計された装置を着用した人のみが対象となる」(ギュンター教授)

 ギュンター教授ら研究者たちは現在、アルゴリズムの強化とシステム効率化のために努力している最中だという。人間とロボットがテレパシーで通信する日は訪れるのだろうか。いずれにせよ、興味深い研究であることは間違いない。

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