ロボットが野菜を栽培する室内農園が、米シリコンバレーに登場した。
米ベンチャー企業・Iron Oxは、収穫など特定タスクだけでなく、全栽培過程を自動化した農場を公開した。企業のオフィスの隣接した743㎡の室内農場では、今後一年間で2万6千個のレタスが生産される。この室内農場は一般の農場に比べて、90%も少ない水量で単位面積当たりの30倍の生産量を確保できるとIron Ox側は説明している。収穫された野菜は、まずサンフランシスコ地域の飲食店に供給され、来年からは食料品店にも納品される予定だ。
室内農場で稼働するロボット2台である。ひとつは、自動車サイズの「アンガス」(Angus)。アンガスは作物ボックスを運ぶ役割を担う。重量450kgであり、最大360kgのレタス栽培用の箱を、成長段階に合わせて適切な場所に移動させる。もう一台は、ロボットアームだ。ロボットアームは、苗植えなどより細かい作業を担当する。4つのライダー(Lidar)センサと2台のカメラが搭載されており、作物を立体的に認識する。
ふたつのロボットは、Iron Oxが開発した「ザ・ブレイン」(The Brain)という名称の人工知能を通じて協力・稼働する。人工知能はファーム全体を監視しながら、温度や窒素濃度、ロボットの位置などを点検。ふたつのロボットに適切なタスクを与える。また、害虫や病気に感染した作物を発見すると、ロボットアームに命令し排除する。
Iron Oxの共同創業者ブランドン・アレクサンダー(Brandon Alexander)氏は、ロボット農場が、米生鮮食品業界のふたつの課題を一挙に解決してくれると説明する。ひとつは、働き手不足の問題だ。米国では現在、農業移民の減少と農民の離脱により労働力不足が深刻化している。あるレポートによれば、2002〜2012年の間に、農業労働力の減少で打撃を受けた野菜と果物の生産市場規模は年平均31億ドルにも達するという。もうひとつは、野菜の鮮度の問題。アレクサンダー氏によれば、米国で販売されている野菜類は農場から平均2000マイルの距離を移動し食料品店に到着する。食料品店は、1週間前に収穫された作物を販売するのが一般的となっている。
Bowery社、Plenty社など、ロボット農場の開発に乗り出した企業は少なくないが、Iron Oxのように全栽培過程を自動化した例はまだないという。現在、Iron Oxのロボット農場も一部人間の手が必要だが、それらは順次自動化されていくという。
なおIron Ox の設立チームは、もともとグーグルのドローン開発チームのエンジニア。2年前に6000万ドルの資金を誘致し、2年間にわたりロボット農場システムを開発してきた。今後、多くの種類の野菜を自動栽培できるのか、また自動栽培が達成された際の価格の問題など、将来的な動向に注目が集まる。
Photo by Iron Ox