中国を代表するロボット・人工知能(AI)スタートアップであるクラウドマインズ(CloudMinds)が、米中間の葛藤の影響で米ナスダック上場計画を断念した。同社は、米国の通信機器メーカー・UTSTARCOMのCTOおよびチャイナモバイル研究院出身であるビル・ファンCEOが、2015年3月に設立した企業だ。現在、中国・北京と米シリコンバレーにそれぞれ本社を置いている。
ファンCEOは、制裁後に改めて米国で上場することは検討していないと、メディアに対して断言した。一方で、中国・上海での上場を進めている。
米国商務省は5月、中国軍の大量破壊兵器やウイグル自治区の人権弾圧に関連したとする理由で、中国の33企業および政府機関を制裁対象リストに加えた。そこに、クラウドマインズも含まれていた。ファンCEOはメディア取材に対し、制裁が米国内の自社ビジネスを無力化させ、受注の75%を喪失したとした。また米国内の人材80%を削減し、6ヶ月前に100人ほどいた米国内従業員が現在では10人になったと付け加えた。
加えて、ここ3年間の状況がますます悪化しているとし、現在、シリコンバレーは中国人の才能、資金、市場を拒否していると言及。米国人が中国に対する制裁を計画しているが、それは実際には、米国人の祖国に害を及ぼしていると批判した。
クラウドマインズは、米ナスダックで5億ドル規模の上場を行うとし、昨年7月に米国証券取引委員会にIPOを申請していた。ソフトバンクからも投資を受けている同社だが、現時点では米国より中国国内の事業規模がはるかに大きい。米ナスダック上場申請時に提出されたIPO資料によると、2018年のクラウドマインズの売上高は1億2100万ドルで、前年比529%増加している。
ファンCEOは、米中国交正常化以前に米国で学位を獲得した米国留学第一世代だ。米ベル研究所の研究員、UTSTARCOMのCTOとして活躍。中国の海外人材誘致プログラム「千人計画」によって2007年に中国に渡り、チャイナモバイル研究院長も務めた。ロボット・AIスタートアップであるクラウドマインズは、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、武漢や上海地域にAIベースのロボット1000台を投入し防疫活動を支援。注目を浴びた。
Photo by CloudMinds HP