銀行や官公庁でチャットボットの導入進むオーストラリア…指摘された課題とは

ロボティア編集部2018年7月23日(月曜日)

オーストラリアで、チャットボットの普及が加速しているという。最近では、NIBヘルスファンドの「Nibby」、ドミノピザの「DRU Assist」、ジェットスターの「Jess」など、仮想アシスタントサービスが続々と開始されている。

銀行もチャットボットの導入に注力している。UBankの「RoboChat」、NABの「digital virtual banker、CBAの「Ceba」、AMPの「Rosie」などが、すでに現場で顧客応対の役割を担っている。公共機関や大学も導入に前向きだ。オーストラリア税務署(Australian Taxation Office)、オーストラリア知的財産庁(IP Australia)、アデレード大学(University of Adelaide)、OUA(Open Universities Australia)、ディーキン大学(Deakin University)、キャンベラ大学(University of Canberra)などが、相次いでチャットボットを導入している。

チャットボットの導入メリットは多く、まずユーザーに情報へのアクセスをより迅速かつ効率的に提供できる点が挙げられる。毎日24時間、休むことなくサービス提供できるのもメリットのひとつだ。またチャットボットは、人間の介入なしに顧客サービス部門の反復的な業務を代替できるため、専門スタッフはより複雑な問題に対応するための業務に集中できる。一部の調査結果では、すべての年齢層のユーザーが、携帯電話よりもテキストもしくはインスタントメッセンジャーを、またコールセンターよりオンラインセルフサービスをより好むという統計も現れ始めている。

今後、オーストラリアをはじめとする全世界では、チャットボットの普及は続いてくと予想されている。調査会社ガートナーは、2年以内に顧客サービス業務の4分の1に仮想カスタマーアシスタントが適用されると予想しており、グランドビューリサーチもチャットボット市場が2025年まで年平均24%成長し、12億5000万ドルに拡大すると見通している。

とはいえ、オーストラリアでは課題も指摘されている。MuleSoft社がオーストラリアのユーザー1000人を対象に行ったレポートでは、「多くの企業がチャットボットを導入したが、顧客のニーズにより効果的に応対するためには改善点が多い」と指摘されている。

同社調査の結果、過去1年以内に企業とのコミュニケーションで「チャットボットを使用した」と答えた回答者は43%にとどまった。その内訳は、ほとんどが流通、銀行、保険、または政府関連サービスとなった。そのうち、3分の1強がチャットボットを使用することで「問い合わせた内容が完全に解決、もしくは回答を受けることができた」と回答する一方、22%は「期待した解決策や回答を得られなかった」と答えている。

また仮想アシスタントを使用したユーザーのうち27%は、「顧客センターの担当者と直接通話しなければならないという答えが返ってきた」とし、14%は「Webフォームに誘導された」としている。

MuleSoft APJ の副社長を務める Will Bosma氏は、「それらは全体的にチャットボットの経験が未熟であり、よりインテリジェントであるべき価値を完全に実現できてない証拠」と指摘している。なおPublicis Groupeの別の調査結果では、回答者の73%が「最初にチャットボットを利用して良くない経験をしたら、再び利用しない」と答えている。

ちなみにMuleSoftの調査結果では、コンピューターとの対話が期待値以下にもかかわらず、回答者は比較的良い印象を持っているとも指摘されている。こちらの点は、チャットボットがもつサービス力が人間より発展する可能性が高いことを示唆するものとなるだろう。実際、オーストラリアの回答者の半数が、チャットボットの24時間対応、電話を待つ必要がないという点などをメリットとして挙げている。質問への迅速な応答、他の作業をしながら複数のチャットボットと会話ができる点、つまりマルチタスク性もメリットとして挙げられる傾向が高かった。

またユーザーは、チャットボットの将来性について楽観視している。回答者の79%が、今後、「仮想アシスタントの顧客サービスレベルが向上すると信じている」と回答。特に銀行や保険、公共分野で、そのような傾向が顕著となった。

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