愛を“可視化”し”富”が増える…ブロックチェーン時代の結婚・恋愛のカタチ

「結婚とブロックチェーン」というテーマは新しく、まだまだ関連サービスや実用例は少ない。ただ少しだけでも考えを掘り下げてみるだけでも、将来的な可能性がとても大きいことに気付く。前述のように愛を可視化する機能の他にも、いろいろな使い方やメリットが想定できる。例えば、「既存の結婚制度に依存しない愛の承認システム」を構築するというのも、ブロックチェーンの使い方のひとつとなるだろう。ブロックチェーンで2人の愛を証明する結婚承認アプリ「SoulGem」の開発を進める、シビラ社(SIVIRA Inc.)CEO・藤井隆嗣氏は言う。

「約3年前、同性婚を取り巻く議論が各国で高まってきたことが、アプリ開発を始めたきっかけになりました。日本では同性婚は認められていませんが、そもそも国の承認が必要不可欠なのかと。愛し合う二人の契約すなわち結婚であって、LGBTの方々が結婚できるか否かを第三者が恣意的に判断すべきではないというのが僕たちの問題意識でした。そこで、特定の権力に依存しない『非中央集権』というブロックチェーンの思想を取り入れた、新しい結婚の形を実現しようと考えました」

SoulGemのプロトタイプでは、カップル同士が電話番号をペアリングし必要事項を記入すれば、ブロックチェーン上にふたりの愛が刻まれ、結婚証明書が発行される仕組みになっている。国や共同体の承認がなくともネットワーク上で愛が承認され、ふたりの関係が保存される仕組みである。ちなみにSoulGemを使えば、婚姻関係だけでなく、各個人の交際履歴もブロックチェーンに刻むことができる。藤井氏は続ける。

「アプリを開発する際に、各個人が恋愛履歴を刻める機能を搭載しました。男女の間には、『わたしたち付き合ってるの?』みたいな認識の不一致がよく発生します。それをブロックチェーンに刻むことで解消しようと考えました。なお恋愛履歴は、互いに確認できるようになっています。つまり、ブロックチェーンに婚姻関係を刻むパートナーが、過去にどのような人と付き合ってきたか把握できるのです。プロトタイプが完成した際、ヒアリングした日米の男性から共通した意見をいただきました。皆、『金融以外のBlockchain活用は面白い』と言いつつも、『そのアプリは本当にいらない』『頼むから、広まらないで欲しい』と大爆笑(笑)。ただ、女性からは人気が高いですね。やはり、結婚や恋愛で何かと騙される可能性が高い女性たちからすれば、安心・安全にパートナーを選ぶ担保になりますから。そういう意味では、恋愛や結婚におけるリスクを減らすというのもブロックチェーン技術を使う強みだと思います」

一方、ブロックチェーン技術や関連ハードウェアを開発するチェリーチェーン社代表の浜田紗綾子氏も、新しい愛の承認制度のポジティブな側面を強調する。なお浜田氏は、18年9月上旬に開催される渋谷区主催「Social Innovation Week SHUBUYA」で、ブロックチェーンを使ったLGBTカップルの結婚イベントの用意を進める担当者でもある。

「これまで、何らかしらの手当や補償がもらえるということで国や役所に、結婚を認めてもらうという選択をしていた人々が多かったと思います。そのため、相手となる対象にはおのずと制限が設けられていた。しかし今では、同性愛を含めさまざまな形のパートナー関係が社会的に表面化してきていますし、パートナー同士がそれぞれ経済的に稼いでいて既存の結婚制度の枠で婚姻関係を結ばなくてもよいという人たちも増えてきています。そのような状況では、結婚を公的機関に苦労して認めてもらう必要がなく、ブロックチェーンに記録しようというカップルが増えてきても不思議じゃないのではないでしょうか。誰かにふたりの関係を認めてもらいたいけど、国じゃなくて、ネットワークに認めてもらえればいいかなと。改ざんできない記録の上に公式なパートナーが記録されるとなれば、精神的な安心感もありますし、何よりロマンチックですよね。しかも相手は国や社会から認められた異性である必要はなくて、同性でもいい。各個人が好きなパートナーを選ぶことができれば、人生の自由度も増していくはずです。神様より技術を信じる私たち日本人にとって、『ブロックチェーン婚』は親和性が高いと思いますよ」

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。

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