細胞ほどの大きさのナノロボットを大量生産する方法が開発された。
米マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)の研究チームは、「シンセル」(syncells:synthetic cellsの略称)と名付けたナノロボットを量産する方法を紹介した。シンセルは、石油や天然ガスのパイプラインなどインフラ内部をモニタリングしたり、人体の中から病巣や損傷部位を発見する際に利用できると期待されている。
ナノロボットを大量生産するためには、原子の厚さが薄くもろい材料が自然に破裂する過程をコントロールする必要がある。研究チームは、破裂線を調節する方法を開発。予測可能なサイズと形状を持つナノポケットを生み出すことに成功した。ポケットの中には、データを収集・記録・出力できる電子回路および各材料が内蔵されている。
「自動穿孔(autoperforation)」と呼ばれるこの新しいワークフローは、科学ジャーナル誌「ネイチャー・マテリアルズ」(Nature Materials)に掲載されている。
研究には、MIT化学工学科のMichael Strano教授、Pingwei Liu博士研究員、大学院生であるAlbert Liu氏ほか、8人のMIT研究者が参加した。
ナノロボットは、10マイクロメートルから、その10倍までの大きさでつくることができる。Strano教授は、ナノロボットを顕微鏡で見た人のほとんどは、人間の細胞と勘違いしたと話している。
研究チームは、表面に付着したセンサーから、周囲の環境の化学的性質など情報を収集・保存・検索することができるシンセルを開発している。シンセルをパイプラインに投入し、情報を収集した後、その情報を検索・活用するなどのユースケースが想定されている。
Liu氏は、ナノロボットを大量生産する方法は非常に革新的だと話している。今回発表された方法を使えば、独立したナノ電子装置をすぐに大量生産でき、内部電子回路の特性に応じて、様々な化学物質、媒介体に、移動・探索・メモリ保存のための能力を付与することができるとしている。
なおつくられたナノロボットは電源を使わずデータを保存することができ、必要な際に情報を引き出すことができる。Strano教授は、電子製品を溶かすことができる強力な溶剤が含まれた水のなかでも、数ヶ月間にわたって安定的に動くことが立証されたと説明している。
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