米・マサチューセッツ工科大学(以下、MIT)が、約10億ドル(1118億円)の予算をかけて人工知能大学を設立する。
MITは15日、人工知能時代に対応した新たな人材育成計画を発表。すでに、資金の3分の2を調達したと発表した。人工知能大学の正式名称は、3億5000万ドルを寄付したブラックストーングループのスティーブン・シュワルツマン会長の名前を取り「MITスティーブン・シュワルツマン・コンピューター大学」となる。
同大学では、学際的研究を中心としたカリキュラムを組み学位プログラムを開設する。コーディングを学んでいない大学卒業生も入学が可能だ。来年の秋学期から大学院の講義を開始するが、大学は50人の新しい教員を採用する計画だとしている。教員の半分は、コンピュータ科学部門出身で、残りの半分はMITの他の研究部門出身となる予定である。
MITのラファエル・リーフ学長は、大学の目標を「未来のバイリンガルを養成すること」と米紙に語っている。未来のバイリンガルとは、コンピュータ技術の見識を持つ、生物学、化学、政治学、歴史学、言語学専攻のエキスパートと定義している。
一方、シュワルツマン会長は「MITの動きは商業的次元ではなく、米国の人工知能の未来に投資するためのトリガの役割になることを望む」と述べている。また、中国政府が人工知能産業を強力に後押ししている状況を指摘。過去に米国政府の支援により、パーソナルコンピュータやインターネットの産業分野で米国が世界をリードしてきた旨を強調した。そのようなコメントからは、MITの人工知能大学設立が、中国の人工知能戦略に対する米国の対抗策であるという見方も成り立つだろう。
MITが新設する人工知能大学が、同分野で覇権を争う米中の力学関係にどのような影響を及ぼすか注目される。
Stephen A. Schwarzman Photo by MIT