韓国科学技術研究院(KIST)が、世界初となる人工知能(AI)ベースの認知症ケアロボット・マイボムの商用化に乗り出す。認知症DTC融合研究団のパク・ソンギ博士チームは、5月8日、「AIソーシャルロボット技術を活用した軽度認知症患者用の生活介護ロボット『マイボム』の開発を完了し、現在、本格的に商用化の段階に入った」と明らかにした。
研究チームは、2019年の下半期まで実証プロセスに焦点を当て、来年には商用製品を発売する計画。マイボムのベースとなっている技術はARBI(Artificial Robot Brain Intelligence)と呼ばれるロボットAI技術で、KISTがソウル市立大、京畿大、漢陽大などと共同研究を行い開発してきたものとなる。
既存の認知症ケアロボットとは異なり、教育サービスの提供にとどまらず、患者を支援・お世話をする機能に焦点を合わせた点がマイボムの差別化された強みだ。提供されるケアサービスの内容は、「緊急および異常状況への対応」、「健康的な生活のサポート」、「パーソナライゼーション」、「肯定的関与」、「社会的コネクティビティ」、「精神活動の支援」などに分類される。
転倒、長時間睡眠、トイレ利用などの状況が発生した場合、ロボットはカメラと音声センサーで患者の状態を確認。保護者に緊急ビデオ電話をかける。健康的な生活サポートの側面では、日時、友人や保護者情報、モノの位置など、生活情報を見逃しがちな患者のためにロボットが常に質問に答えてくれる。「薬の時間ですよ」など、音声コメントで薬の服用をサポートしたりもする。
パーソナライゼーションは、患者の情報を収集しカスタマイズ対応をすることを意味する。患者の性格、周期的な行動の変化、重要な事柄などを記憶し患者を支援する。一方、患者が薬をしっかりと服用できた際に応援・評価してくれるなどの機能が肯定的関与の範疇に属する。社会的コネクティビティとしては、インターネットやSNSなどを利用して、患者が望む時に家族、友人、保護者などとつないでくれる。また、クイズや病院の訓練など、ロボットを通じて精神活動をサポートするコンテンツも提供する。
実用化の初期段階では、少なくとも2時間程度、ロボットが独断的に認知症患者をケアすることが可能になる見込みだ。ロボットの販売は、2018年12月にKISTが出資したスタートアップ・ROAIGENが担当。価格は1台当たり約50万円で、量産を通じて値段を下げていく計画だ。
韓国では軽度の認知症患者は全認知症患者の60%を占めるが、生活を支援する人材が限られている。パク・ソンギ博士は「今回のマイボムの商用化によって、認知症ケアロボットの開発競争国である日本より一足先に市場に足を踏み入れることが目標」としている。また、「現在、日本では東京大学が企業との共同研究で認知症ケアロボットを開発中だが、試作品が披露されておらず。韓国が有利な状況と見ることができる」と付け加えている。
Photo by 認知症DTC融合研究団