韓国・ソウルの繁華街では、ある特殊な技能を持ったヒューマノイドロボットが活躍中だ。ソウル駅近郊にあるクラシックバー「コーヒーバー・ケイ」には先ごろ、ロボットバーテンダー「カボ」を正式採用した。
カボは自分自身を「アイスカービングロボット」と紹介する。カボの主な業務は、正方形の氷を丸いボールアイスにする「アイスカービング」である。カボという名前も「アイスカービングをするロボット」の略称で、一緒に働く仲間によってつけられた。丸く削られた氷は、お酒に接する面積が正方形の氷よりも狭く、ゆっくりと溶け、その味をより味わい深いものにしてくれる。
カボはまず片手で立方体の形の氷を慎重に取り上げ、次に高速回転するカッターで削っていく。約2分で削り終えると、丸い氷=ボールアイスをグラスに入れる。ロボットが滑りやすい氷を握り顧客の目の前で安全に削る作業を行うには、非常に洗練された技術が必要となる。バーのマネージャーも、「氷を手に持って丸く削る作業は、熟練したバーテンダーでも難しい技術」と説明している。
カボを開発したロボケア(robocare)のキム・ソンガン代表は、「(カボには)半導体プロセスラインで使われるレベルの、精密なロボット技術が適用されている」とし「状況に応じて様々なツールを変えて挿入すれば、料理など他の作業も行うことができる」と説明している。つまり、工場で働く産業用ロボットの技術をつかって、社会空間で活躍するロボットをつくったということになりそうだ。
昨年、バー運営するチェ・スンリョン代表は、韓国科学技術研究院(KIST)の関係者に会い、「バーで働くロボットをつくりたい」という話を提案した。面白いアイデアだと考えたKISTの関係者は、「21世紀フロンティア知能ロボット事業団」が開発したロボット技術を、ロボケアに提供。開発開始から約8ヶ月、ロボケアがカスタマイズしたパーテンダーロボット・カボは、チェ代表に届けられた。
キム代表は「最初、提案があった時は少し当惑しましたが、今後このようなオンデマンドカスタムロボットの時代が来るという気がした(中略)カボの開発を契機に開発したオンデマンドロボットプラットフォーム『アロ(A-RO)』を通じて、今後新しいビジネスチャンスを狙っていきたい」と話している。
国内で初めてロボットバーテンダーの雇用者となったチェ代表は「特にカボの可愛い顔が気に入っている(中略)お客さんにも好評で、すでにうわさが立っている。また同業者も関心を見せている」と話している。
ロボケアは今後、顧客の姿を認識し、普段よく飲むウイスキーをおすすめしたり、会話を交わすことができるよう、次世代のカボに人工知能技術を導入する計画だという。
キム・ソンガン代表は「ソフトバンクのヒューマノイドロボット『ペッパー』は、すでに2年以上現場で仕事して、データを集め、賢くなっている(中略)韓国国内においても、第4次産業革命の時代に備えて、一日も早く実際の現場で知能型ロボットが活躍すればこそ、データを蓄積する上で世界的なロボット技術競争に遅れをとらない」と述べている。
なお、カボの導入には2億ウォン(約2000万円)がかかっているそうだ。サービス現場で働くサービスロボットには、価格をいかに下げるかという課題があるが、カボも例外ではないようだ。今後、量産やコストダウンが実現し、バーのいたるところでカボの姿を見かけることができるようになるのだろうか。バー経営者や愛好家たちにとっては、その行方が気になるニュースである。
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