2019年のロボット業界10大買収リスト...医療ロボット関連社が3社ランクイン

ロボティア編集部2020年1月7日(火曜日)

2019年に行われたロボット業界の買収合併のうち、金額面で最大規模となったのは、ルネサスエレクトロニクスによるインテグレイテッドデバイステクノロジー(IDS)の買収で、取引金額は67億ドルに達した。またトップ10の買収合併うち、3件が医療用ロボット関連であることが明らかになった。

ザ・ロボット・レポートは、2019年に世界各地で行われた68件のロボット分野の買収事例を調査。取引金額が最も高いトップ10の事例を発表した。なお、自律走行車を開発する自動車メーカーであるウェイモ(Waymo)が、英スタートアップ・ラテンロジック(Latent Logic)を買収した事例は取引金額が高かかったと推定されるが、情報が公開されていないため今回の調査には含まれなかった。

買収金額が最も高かった事例は、上述の日本の半導体メーカー・ルネサスエレクトロニクスの事例だった。ルネサスは自動車関連の半導体市場でNXP半導体に続き、30%のシェアを保有するメーカーだ。ルネサスは、自律走行車関連の半導体専門企業・IDSを67億ドルで買収。これは、自律走行市場の拡大に備えた戦略的M&Aと分析されている。

2番目の規模となったのは、ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)のオーリスヘルス(Auris Health)の買収で、取引金額は34億ドルとなった。オーリスヘルスは、インテュイティブサージカルを共同設立し、“ロボット手術の先駆者”とも呼ばれるフレデリック・モール(Frederic Moll)が2007年に設立し他企業だ。内視鏡、手術器具、ナビゲーション、ロボット技術をひとつのプラットフォームに統合した「モナーク」(Monarch)を開発。J&Jは、34億ドルとは別に実績基準によって追加で23億5000万ドルを支払うことにしており、その買収金額は最大57億5000万ドルに達すると予想されている。

3番目の規模となったのは、日立製作所の米ロボットSI企業「JRオートメーション・テクノロジーズ」(JR Automation Technologies)」の買収で、買収金額は14億2500万ドルだ。 JRオートメーション・テクノロジーズは1980年に設立され、自動車、航空、物流、生命科学産業などを中心に、様々なロボットおよび自動化ソリューションを提供している。安川電機、ファナック、ABBなど大手用ロボットメーカーの協力企業でもある。

トップ10の買収事例のうち、3件は医療用ロボット分野となった。ジョンソン・アンド・ジョンソンのオーリスヘルス買収以外にも、シーメンスのコリンダス・バスキュラー・ロボティクス(Corindus Vascular Robotics)の買収(11億ドル)、またストライカーによるモビウス・イメージング&カルダン・ロボティクス(Mobius Imaging & Cardan Robotics)の買収(5億ドル)などの事例がそれにあたる。

昨年は、自律移動ロボット(AMR)を開発するスタートアップの買収競争も熾烈を極めた。最も注目を集めた買収はショピファイ(Shopify)による、6リバーシステムズ(6 River Systems)の買収だ。買収金額は4億5000万ドルである。2012年にアマゾンがキバ・システムズを7億7500万ドルで買収した後、AMR分野では最大規模の買収事例となった。

宇宙ロボット分野ではマクサ(Maxar)が子会社である次世代ロボットアーム開発企業・MDAを、ノーザンプライベートキャピタルに7億6500万ドルで売却した件が注目を浴びた。1969年に設立されたMDAは、国際宇宙ステーションにロボットアーム「カナダアーム」Canadarm)を提供した企業である。 2008年に米企業・ATKが同社を買収しようとしたが、カナダ政府の反対により実現しなかった。

10大買収事例にはその他に、PTCによるオンシェイプ(Onshape)買収(4億7000万ドル)、フリアーシステムズ(FLIR Systems)によるエンデバーロボット(Endeavor Robotics)の買収(3億5800万ドル)、カマンによるバルシールエンジニアリング(Bal Seal Engineering)の買収(3億3000万ドル)などが含まれている。

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