AIロボットが減少させるのは単純労働者ではなく管理職...米大学研究者が報告

ロボティア編集部2020年12月4日(金曜日)

人工知能(AI)やロボット、自動化技術の発展により、人間の仕事が脅かされるという懸念の声が改めて高まっている。しかし、米ペンシルバニア大学のLynn Wu教授らの新しい研究結果は、「ロボットを導入した企業の総雇用はむしろ増加」し、「ロボットを導入していない企業の総雇用は減少」する兆候があると指摘する。また「ロボットを導入することで単純労働者は増加し管理職が減少」することも明らかになったと報告している。

Wu教授はカナダ統計庁が公開した2000年から2015年までの税務申告データに基づいた企業の雇用および財政状況のデータ「National Accounts Longitudinal Microdata File」(NALMF)と、統計庁のビジネス労働市場分析部門、労働統計部門が管理する従業員の質と雇用状況に関する横断調査「Workplace and Employee Survey」(WES)などの統計資料をベースに、AI&ロボットの導入と人間の雇用関係について分析している。

分析の結果、「ロボットが人間の仕事を奪う」という先入観とは真逆の結論がでたとする。実際にはAI&ロボットを導入した企業の総雇用は、時間の経過ともにむしろ増加する傾向をみせ、反対に導入していない企業は、競争力の低下のため労働者を解雇せざるをえず、最終的にAI&ロボットを導入した企業が競合他社の人材を奪う現象が引き起こされているという。

加えてこれまでは「ロボットが単純労働者の雇用を奪う」とされてきたが、むしろ単純労働者の雇用は増加え、管理職の仕事が減ることも明らかにされた。Wu教授はこの現象について、AIおよびロボットが日程管理や業務確認などに適しているうえ、自らが実行した業務を正確に数値やデータとして記録することができるため、管理コストが必要ではなくなるからと説明している。

Wu教授は、AIやロボットの導入を希望する企業に対して、人件費の削減ではなく製品やサービス品質向上のために導入すべきとし、活用のためには業務プロセスの再設計が必要であるとアドバイスする。

【Photo by Roboteer】