米IDC発表:ロボット世界市場の成長率は年17%…2019年には16兆円規模へ

ロボティア編集部2016年12月20日(火曜日)

 ロボット産業の世界市場が、今後、年平均17%ずつ成長、2019年までに1350億ドル規模に成長するという予測が示された。

 米市場調査企業・IDCは、「IDC未来展望レポート:世界ロボティクス予測2017(IDC FutureScape Report:Worldwide Robotics 2017 Predictions)」を発表した。IDCは同レポートで、2019年のロボット産業の世界市場が、1350億ドル規模に成長すると予想した。その主な理由として、インダストリー4.0、スマートマニュファクチャリングの取り組み、「中国製造2025」など、ロボット産業を育成する政策が相次いで登場していること、また、企業向けサービスロボット市場が成長していることなどを要因として挙げた。

 ローカスロボティクス(Locus Robotics)などは、物流センター用ロボットを次々とリリースしており、リシンクロボットのコラボレーションロボットなどが、製品組立をはじめとする様々な分野に広がっているという分析している。また、コンシューマー向けロボット市場も徐々に伸びると予想している。

 IDCは、「サービスとしてのロボット(robot as a service)」が、企業を中心に拡散すると予想している。フェッチロボティクス(Fetch Robotics)、ローカスロボティクスなどのロボットメーカーは、時間単位で課金するビジネスモデルを、クライアント企業の物流センターに提案している。物流センター側も、繁忙期に高賃金な一時労働者を採用するよりも、ロボットを導入して、急増する需要に対処する傾向を示す可能性が高いというのが、IDCの見立てである。なお、警備ロボット「K5」を供給するナイトスコープ社も、時間制課金サービスを展開する。 IDCは、2019年までに企業向けサービスロボットの30%が、「サービスとしてのロボット」の形で普及すると予想している。

 IDCはまた、ロボット担当最高役員(CRO)の役割が増大すると予想している。幅広い領域で、戦略的にロボットの導入と拡散を考える組織であればあるほど、ロボット関連のビジョン、ミッション、戦略などを専門的に扱うCROや、リーダーシップの存在が切実だという指摘である。 2019年までに30%の組織が、CROまたは類似の役割をはたす役職を導入するものと見られる。

 IDCは、ロボットが「共有された知識のネットワーク(mesh of shared intelligence)」に接続され、ロボット同士のコミュニケーション効率が向上。知能も高くなると指摘。IoTおよびセンサーでネットワーク化され、2020年までにロボット操作効率が200%増大するとの見解を示した。また2020年までに、企業向けロボットの40%がインテリジェントなネットワークに接続され、2020年までに60%のロボットがクラウドベースのソフトウェアに依存し、2018年までにコラボレーションロボットが新たに導入されたロボットの30%に達すると予想した。

 ロボットの普及で、仕事が奪われるという懸念も高まっているが、IDCはロボット関連の専門知識の格差が激しくなると予想。専門知識を持っている人には新たな雇用の機会があるが、そうでない人は失業の危機に直面する可能性があるとも指摘した。IDCは、これを「ロボット才能の危機(Robotics Talent Crunch)」と定義した。

 IDCは、各国政府がロボット関連の規制措置を実施する可能性が高いとも予想している。ロボットの代わりに労働者を雇用する企業に、インセンティブを与える方案が用意され、ロボットの安全、セキュリティ、個人情報保護などに関する規制もつくられるとする。なお、これまで自動車およびエレクトロニクス産業分野の大手企業を中心にロボットが導入されたてきたが、今後は中小メーカーにもロボット導入が拡散するとした。

photo by John Williams(via dvidshub.net)