EC世界最大手・アマゾンの物流倉庫にロボットが導入された後、事故の数が業界平均値よりほぼ2倍に増えているという主張が提起された。アマゾン側は作業者の安全のため些細な事故まで報告するようにした結果としているが、ロボット導入後に作業目標が上方修正されたため、事故が増えざるを得なかったとの分析も生まれている。
米非営利ニュース組織「Center for Investigative Reporting」のニュースサイト「Reveal」は9月末、2019年にアマゾンの物流倉庫150ヶ所で、作業者が仕事を休んだり、もしくは制限的な業務のみ可能となる負傷が1万4000件発生したと報じた。
また報道によれば、アマゾンの物流倉庫では、2019年に作業者100人あたり7.7件の事故が発生しという。これは2016年に比べて33%も増加した数値であり、業界平均値よりのほぼ2倍に達する。またワシントン・デュポンの物流倉庫では、業界平均の5倍にもなる100人あたり22件の事故が発生したとしている。
アマゾンは2016年に7億7500万ドルで物流ロボット企業「キバシステム」を買収。アマゾンロボティクスに名称を変更後、物流倉庫に本格的にロボットを導入開始。現在、20万台以上運用している。人間と協業するタイプのロボットだ。
アマゾン側は、物流ロボットの導入で倉庫に置けるモノの容量が40%増えた、また労働者は以前より単純作業を削減することができるとしている。一方、物流倉庫の作業者からは、ロボットが導入されることで移動距離が制限され、単純な作業を繰り返すことになったと反対の主張も提起されている。
著名な倉庫用ロボットメーカー・フェッチロボティクスのメロニー・ワイズCEOは、現地メディアとのインタビューで、アマゾンのロボットは作業者に対し、ロボットが運んできたモノを掴むため、体を曲げたり、腕を上に伸ばすなど、人間工学的に合わない動作を強制すると言及したことがある。
報道は、ロボット導入後、物流倉庫では作業者が扱う商品が100種類から400種類にまで増えたとする。また大規模な割引イベントである「プライムデー」や「サイバーマンデー」には事故が集中するなど、ロボット導入による業務増加と事故増加を関連付ける統計を証拠として提示している。なおアマゾンの内部資料によると、2019年のプライムデー期間だけで400件近い事故が発生したという。
アマゾン物流倉庫を調査した米・労働安全衛生局の医療責任者のKathleen Faganは、Revealに対し、モノをより迅速に移動するロボットが導入されると、作業者もそれほど早く物を取りあげたり動かなければならないとし、それらが要因となり作業者の負傷が増える可能性があるとコメントしている。
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