米中対立の深化で中国人AI専門家はどうなる!?...米国内から懸念の声

ロボティア編集部2020年6月10日(水曜日)

米国には永住権を保有している中国人の他にも、中国でAI関連の学位を取得した後、米国企業に入社し活動している人工知能(AI)専門家が多い。米国メディアは、今後、米中の対立が激化するにつれ、彼ら「米国の中の中国人ハイテク人材」がどういう立場に置かれるかを注視している。米国の中国に対する制裁はさらに強化されるかもしれないが、専門家たちを冷遇することができないというジレンマがあるからだ。

例えば、米国防総省は昨年、GoogleのAIクラウドを利用してドローンで撮影したビデオ画像を分析する「プロジェクト・メイブン」に着手している。その際、約12人のAI専門人材を迎え入れた。その全員が中国出身の研究者だった。他にも、米国の先端テクノロジー分野に従事する中国人の割合が少なくないという調査結果も出ている。国内随一の中国通として知られるヘンリー・ポールソン元財務長官が設立したポールソン研究所が調査した結果によると、米国内の中国人AI専門家のうち、約54%は米国の大学の学位を取得している。 MIT、スタンフォード大学、カーネギーメロンなど一流大学出身だ。中国の清華大学や北京大学出身は32%にとどまっている。

そのなかで、中国に所在する企業に勤務する専門家は34%。対して、米国企業に勤務する割合は54%にのぼった。ポールソン研究所は、中国AIの専門家は中国よりも米国で多く定着していると分析している。そんななか、トランプ政権は中国人が米国内の研究にアクセスすることを制限しようとしている。先月5月には、中国の軍事大学関連の研究員と大学院生のビザを取り消しする計画が報じられている。

米国メディアは、これまで米国の巨大IT企業が展開してきたAI関連事業のアイデアのほとんどが、中国人スタッフから生まれているという点にも注目した。グーグル、アマゾン、IBMなど、米国のIT企業が中国人なし運営できない状況だと、政府の過剰な制裁措置を非難する声も少なくない。昨今の状況に対し、米国大学出身の中国人AIエンジニアや、研究所、企業からも懸念の声が上がり始めている。

米中の対立は、米国内の中国人AI専門家の立場にどう影響をもたらすのか。ひいては、彼らに支えられた米国企業や研究機関の競争力がどう変化するのか。今後の去就が注目される。

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