中国科学院(Chinese Academy of Sciences :CAS)が、ラフスケッチされた似顔絵を精巧な写真イメージに転換するAI技術を開発した。名称は「ディープ・フェイス・ドローイング」だ。絵画の教育を専門的に受けていない人が書いた絵や、未完成の絵であっても高度な肖像画像に転換してくれるのが特徴だ。警察が事件捜査の際に用いるモンタージュ作成を効率化するなどのユースケースが、具体的に想定されている。
これまでも、絵を写真に変換するというようなコンセプトを持ったAI画像処理技術は存在した。ただCASが今回開発したディープ・フェイス・ドローイングは、性能面で既存のものより精度が向上しているというのが各海外メディアの評価だ。顔の各パーツをひとつひとつ精密に描かなくても、人工知能がデータベースを参照し最適な候補を選んでくれるという使いやすさのためだ。研究チームは2020年7月に開催されるコンピュータグラフィックス分野の国際学術大会「SIGGRAPH」で、同技術を本格的に公開する予定だという。
なお、ディープ・フェイス・ドローイングに対しては、欧米メディアから課題もすでに提起されている。それは、「人種の判別をいかに行うか」という点で、研究チームから具体的な言及や説明はなされていない。現在、資料内で公開されている、ラフスケッチから生成された肖像画像例のほとんどが白人となっている。
「人種とAI」という問題設定は、欧米圏を中心に世界各国でセンシティブさを増すと見られている。研究チームがどのように説明していくか、とても気になるところだ。
Photo by CAS