蜂型ロボット「ロボビーズ」人工授粉から遭難者の探索などに使用か

ロボティア編集部2015年11月21日(土曜日)

 蜂を模倣した超小型ロボット「ロボビーズ(RoboBees)」が開発された。ロボビーズは、人工授粉から遭難者の探索まで、幅広い用途で利用される見通しだ。今回の研究には、ハーバード大学、ニューヨーク州立大学バッファロー校、フロリダ州立大学などの研究者たちが参加している。研究者たちは、蜂という昆虫を模倣し、その超小型飛行ロボットを開発した。バイオミメティクス=生物模倣は科学技術分野で注目を集めているが、ロボビーズの着想もまた生物からインスピレーションを受けたもののようだ。

 研究者たちがこれまで作ってきたロボットは、周囲を認識する能力が不足していたため、障害物を避けたり、花に降り立つ任務をこなすことが難しかった。そこで、レーザーベースのレーダーを視野に使用した新型ロボットの開発に乗り出した。現在では、水面に落ちた際にも、再び飛び立つことができる性能を備えているという。

 ロボビーズの目には、ライダー(LIDAR=Light Detection and Ranging)センサーと呼ばれる技術が使用されている。これは、ラジオ波の代わりに「不可視レーザーパルス」を利用したものだ。

 ライダーセンサーは、目に見えないレーザーが物体に触れ反射して戻ってきた時間を測定、物体までの距離や対象の大きさや形などを計算する。なお、このレーザーは人体に触れても安全な代物だそうだ。

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photo by ハーバード大学マイクロロボット研究所

 研究に参加しているバッファロー校の機械科学・工学助、カシック・ダントゥ(Karthik Dantu)教授によれば、ロボビーズから放たれるレーザーは「Xboxでゲームをするときに使用する、マイクロソフト社製(MS)のキネクト(Kinect)に装着されたデバイスと非常に似ている 。既に日常で使用されている安全な技術です」とのこと。

 このライダー技術は、世界で開発中にある無人自動車が、周辺環境を解析する際にも使用されている。ダントゥ教授は、同技術は自動車メーカーが採用しているものと同じとしながらも、「我々は、この技術を1ペニー硬貨よりも小さなロボットに適用できるように小型化した」と述べている。

 今回の研究チームには、フロリダ州立大学のコンピュータ-視野の専門家であるサンジーバー・コプパル(Sanjeev Koppal)助教授らも合流。ロボビーズが周辺環境を分析および把握するためのナビゲーションアルゴリズムも平行して開発している。

 コプパル教授は「ライダーは、基本的に光パルスの“反射”を利用する」とし「非常に高速なため、小さなロボットの中に複雑な回路なしで機能を加えるのが難しい」と指摘。ただし、「超小型-ライダー装置は、約2000分の1オンス(56mg)になる予定」であり、「今後3年以内にセンサーとアルゴリズムを完成させる計画だ」としている。

 研究者たちは、この超小型ライダーセンサーが、昆虫型ロボット以外にも搭載できるという見通しを立てている。たとえば、マイクロソフト社製のキネクトと似たような、ナチュラルユーザーインターフェース(NUI)を使用するモバイルデバイスなどである。コプパル教授は「スマート衣類やスマートウォッチのようなウェアラブル技術にも転用することが想像できるだろう」と述べている。

 なお、同研究はこれまでの3年間、アメリカ国立科学財団(National Science Foundatio)から110万ドル(約1億3000万円)の支援を受け進められてきた。