米ワシントンポストは3月3日、米コーネル大学(cornell university)の研究グループが、タコの皮膚からインスピレーションを受けたロボット用皮膚を開発したと報じた。その人工皮膚は、光を放ちながら元のサイズの6倍まで伸ばすことが可能だ。詳細については学術誌「サイエンス」に掲載された。
論文の説明によれば、人工皮膚はセンサから入力される情報に基づき、発光する色を変えたり、情報を表示きるように設計されている。この技術を発展させれば、人間の体の動きに合わせて形が変わる、着用型スマート機器などを開発することができる。
今回、そのスマートフォンサイズの人工皮膚を開発したコーネル大学・有機ロボティクス実験室のクリス・ラルソン(Chris Larson)氏は、ザ・クリスチャンサイエンスモニター(The Christian Science Monitor=CSM)の取材に対し、「人間の皮膚やタコの皮膚よりもはるかに伸縮性に長けている(中略)素材の特性としては、ゴムバンドや風船のようなものだ」と述べている。
ここ数年、金属でできた硬いロボットではなく、柔軟な素材を使用したソフトロボットの研究が活発に進められている。ソフトロボットは、これまで使用されてきた硬い金属素材を使用せず、曲げたり、まとめたりすることができ、狭いスペースでも活用可能なロボットだ。また、ロボットとともに作業する人間のリスクを、軽減できるというメリットがある。例えば今後、崩壊した建物に侵入し探索や救助活動を行ったり、製造業などで人間と協業する場面では、ソフトロボットがその役割を担うことになると注目されている。
現状、ほとんどのソフトロボットには、まだまだ堅い素材が多用されている。伸縮自在なロボットを作るためには、電池、回路基板、ディスプレイなど基本的な部品に伸縮性を持った素材を使用する必要がある。
コーネル大学の研究グループが開発した人工皮膚は、電導性を持つヒドロジェル(hydrogel)で作られたふたつの層と、電気が通過する際に光を放つコンデンサの層で成っている。
コーネル大学で機械流体力学を専攻するロバート・シェパード(Robert Shepherd)助教授は、ワシントンポストの取材に対し、研究は「色を変えて情報を表現できるソフトロボット」と「形を変えることができるディスプレイの開発」というふたつの方向に進んでいると伝えている。
前者の研究は、人間が触ると色が変わる「感情型ロボット」の開発に発展させることができる。未来には、人間と似たロボットを作ることができるという意味になる。周辺環境の刺激に応じて色を変更することができるならば、人間が気づかない危険な状況や有用な情報を提供することもできる。
現在、同研究の最も大きな課題として残っているのは、温度や湿度に応じてヒドロジェルが破損するという点。研究者は、その課題を克服することができる類似物質の開発が必要だと明かしている。
(ロボティア編集部)