最近、コンピュータアルゴリズムをベースにした人工知能投資顧問・資産運用サービス「ロボアドバイザー」に、資金を預ける人が増えはじめている。ロボアドバイザーは、ロボット(Robot)とアドバイザー(Adviser)の合成語。これまで人間の資産管理の専門家(PB)が務めていた金融商品の投資相談業務を、コンピュータプログラムが各種ビッグデータおよび投資のアルゴリズムを利用して代替えする。特徴としては手数料の安さなどが挙げられ、若い世代を中心に大きな人気を得ている。
ブルームバーグなど海外主要メディアは、経営コンサルティング会社・ATカーニーの最新レポートを引用。ロボアドバイザーの運用資産規模が2020年に2兆2000億ドル(約260兆円)に達すると予想した。これは、米国全体の投資額の5.6%の規模になるそうだ。
「手頃な手数料で米国タクシー業界を驚かせたウーバー(Uber)のように、ロボアドバイザーが米国の金融業界に新たなシステムとして定着する可能性が高い」(経営コンサルティング会社・ATカーニー)
米国でロボアドバイザーが普及するにつれ、ウェルズフロント(Wealthfront)、ベターメント(Betterment)などのスタートアップベンチャーが急速に成長している。
現在ベターメントは、11万1800人の資金、約30億ドルを、ロボアドバイザーで運用している。ベターメントの最高経営責任者(CEO)のジョン・スタイン氏は「会社は非常に速い速度で成長している」と明らかにした。
大手資産運用会社の進出もはじまっている。バンガード(vanguard)は去る5月から、ハイブリッドタイプのロボアドバイザーを正式にサービスしており、チャールズ・シュワブ(charles schwab)も去る3月に「シュワブ・インテリジェントポートフォリオ」という名称でロボアドバイザー投資を開始した。モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカも市場に参入することが明らかになっている。
ロボアドバイザーは、低料金と高いアクセシビリティで、20、30代などいわゆる”ミレニアル世代”から人気を集めている。人が資産管理をするのではなく、アルゴリズムベースのプログラムが自動的にポートフォリオを管理するため、手数料の負担が大きく削減される。つまり、既存の高価な手数料が必要だったサービスが、低コストで可能となる。ウェルズフロントの場合、投資額が1万ドル以上の場合にのみ手数料0.25%を賦課する。ベターメントの場合、手数料が0.15〜0.35%だ。
既存のサービスの手数料が金融取引額の約1%であるのと比較すれば、はるかに安価なのは一目瞭だ。また、既存のPBサービスは巨額の資金が必要だが、ロボアドバイザーは資産規模が大きくなくても利用できるというメリットがある。
30代以下の若いユーザーは、金融会社の従業員を直接と会うより、スマートフォンを活用したオンライン諮問に魅力を感じるという側面もある。米銀行大手ウェルズ・ファーゴのジョン・シュルーズベリー最高財務責任者(CFO)は、「最近の世代は人と対面せず、技術的にアプローチする方法をより好む」と明らかにしている。実際、ウェルズフロントに資産を預けた顧客のうち60%は35歳以下であり、ベターメントも50歳以上の中高年の顧客から出る営業利益は、会社全体の利益の30%に過ぎないと明かしている。
またブルームバーグによれば、ロボアドバイザーは米国と欧州の資産運用市場に続き、新興富裕層が最も急速に増加しているアジア・太平洋地域で注目されていると伝えた。
ロボアドバイザーサービスは、香港やオーストラリアでも開始されている。また、香港、シンガポール、台湾の規制当局がここ最近、フィンテック(金融と技術が結合したサービス)分野の成長促進と監督を担当する部署を新設したことも、ロボアドバイザーの普及に対応するためという分析が出ている。
一方、ロボアドバイザーの普及には課題も残る。検証され尽くされていないコンピュータアルゴリズムを使用し、投資を決定するには限界があるという懸念の声が少なくない。
ピナクル・アドバイザリーグループ(Pinnacle Advisory Group)のリサーチ担当ディレクターであるマイケル・キセス氏は、「マーケットウォッチ(marketwatch)」の取材に対して、「ロボアドバイザーは人間の投資家に比べて、創造的な投資戦略がない」と指摘している。米投資専門家フランク・ムーアもワシントンポストに対して「コンピュータにできないことは多い」とし「2008年の金融危機の時のように、突然、株式市場が凍りついた場合、ロボットが状況に対応するのは容易ではないだろう」と警告している。
photo by Wealthfront