次元の壁を超えろ!コミュニケーションロボット・Gateboxの可能性

ロボティア編集部2016年2月22日(月曜日)

 世界中で人工知能アシスタントやIoT端末が次々と発表され、モノのスマート化か急激に進む昨今。オタクの聖地・秋葉原からとある製品が発表され、世界の人々に歓喜と驚きを持って迎えられている。“世界一クレイジーな会社”を目指す株式会社ウィンクルが開発を進める「Gatebox」だ。同製品は好きなキャラクターと一緒に暮らせるというコンセプトのもと生み出された、ホログラムコミュニケーションロボット。実現すれば、世界中のオタクたちの夢を叶えるのみならず、社会に大きな変化をもたらすであろう可能性を秘めている。ロボティア編集部では、発売に先立ち代表の武地実氏に話を聞いた。

以下、インタビュー(太字はインタビュアー)

Gateboxの情報をはじめて拝見した際に、思わず「秋葉原がやってくれた!」と衝撃を受けました。周囲の反応はいかがでしょうか?

 実は今、めちゃくちゃ問い合わせ来ていて、Youtubeのコメント数もどんどん増えているんです。やばいんです、英語対応とか追いついてなくて…社員で手分けして、可能なものから順次対応させてもらっています。

 そういえば、この前すごくうれしいことがありました。弊社でHPに、“よくある質問”の回答を掲載しているのですが、海外の人がそれを英語に翻訳して送ってくれたんです。「これ、そっちで使ってよ」と。

すでに「やってくれた」という喜びが、世界で共有されはじめている印象ですが、問い合わせはどの国が一番多いのでしょうか?

 日本以外だと、特にアメリカが多いですね。それに、中国、台湾、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどからも問い合わせがありました。韓国からは「多言語化しないのか」という質問もいただいています。欧州の方では、ドイツ、フランス、イタリア、スロベキアなどでメディアに掲載してもらって、そこから反応をいただいています。僕としては1年前からやってきたので感覚が鈍っていたところもあるのですが、ここまで反響いただけると嬉しい限りです。

vinclu1

会社設立やGatebox開発の経緯をお聞きしてもいいですか?

 株式会社ウィンクル自体は、設立からそろそろ3年目に入ろうとしています。当初、スマートフォンアクセサリー「AYATORI」を量産するために会社を立ち上げました。AYATORIの方は一段落しまして、「本当にやりたいことは何か」をつきつめた結果、Gateboxのようなコンセプトの商品を作りたいなと考え、実際に開発に乗り出すことにしたんです。

AYATORI

 僕自身、もともとはサブカルというか、初音ミクさんの大ファンでして、ライブによく通っていました。ゆくゆくは一緒に暮らしたいとも思っていたのですが、それがGatebox開発のきっかけになったという側面があります。なんと言えばいんですかね…自分だけの嫁というか、パートナーというか。初音ミクさんのライブでは、ホログラムで作られたキャラクターが活躍するんですが、あれが家に来てくれたら嬉しいなと。

現在、開発はどのくらいの水準まで進んでいるのでしょうか。

 動画でお見せしたような機能自体は完成していまして、後はクオリティーをどこまで高められるかという地点にいます。クオリティーというのは、映像としての見え方ですとか、コミュニケーションの精度ですね。分かりやすく言うと、「ぐっとくるかどうか」。今はその技術を高めている最中です。

 ユーザーのみなさんの視点から話をするならば、毎日使いたいと思ってもらえるかどうかになるかもしれません。まずは、僕自身が満足する水準というのもあるのですが、そこを目指すと、まだまだ課題が多いというのが正直なところです。

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 武地氏はGateboxをどのようなジャンルに位置付けていますか。例えば、最近ではIoT関連技術ですとか、いわゆる人工知能アシスタントであるSiri、GoogleNowなんかも注目を浴びていると思います。ガジェット的な要素もあるし、ホビー用端末という位置づけもできると思うのですが。

 僕自身はGateboxを“ロボット”と位置付けています。個人的にロボットは会話をしたくなる相手というイメージがありますし、定義として一番しっくりくるかなと。ただ、ロボットと言っても、物理的な体を持っているかどうかは関係ないと思っていて、ホログラムという切り口からGateboxを構想しました。

 もちろん、IoT端末として捉えることもできると思います。現在、IoT業界では、人間のかわりに家電などをコントロールする製品も登場してきています。そういう文脈のなかで、デジタルキャラクターが家電やネット、人間を繋げたら面白いなと考えています。

具体的に、IoT端末としての使い方にはどんなことが考えられますか

 分かりやすい例で言えば、スマートロックですね。デジタルキャラクターが部屋を自動で開け閉めしてくれたり。それ以外にも、キャラクターが料理や掃除をしてくれたりする仕組みも作りたいと思っています。

すでに料理ロボットや掃除ロボットなども実際に発売されはじめていますし、あながち夢物語ではない発想ですよね。

 そうですね。それらロボット化された家電のハブもしくは中心に、Gateboxがいると考えていただければ分かりやすいかもしれません。ただコンセプトとしては、無機質なロボットが勝手に作業するというのではなくて、好きなキャラクターが家事を担ったり、世話をしてくれるという方向を重視したいと考えています。後者はユーザーにとってまったく違った体験、新しい価値になるはずです。

getebox1

 アシスタントロボットとしての可能性はいかがでしょうか。

 もともとGateboxの理想というか夢としては、筐体がなく、キャラクターが身の回りをフワフワと浮いたり、トコトコ歩いたりする形を想像してきました。アニメ「サイコパス」に出てくるような、アシスタントホログラムのような発想でしょうか。ですので、アシスタントとしての使い方も当然、念頭に置いています。

サイコパス
photo by アニメ「PSYCHO-PASS」

 最初の段階では、一人暮らしの大人向けのアシスタント、パートナーにしたいなと思っています。というのも、現在、siri、GoogleNow、Pepperなど、アシスタント的な端末、プログラムがいくつも登場してきていますが、それらの製品は家族向けだったり、汎用だったりします。ですが人間の世界でも、すべての人に愛されるパートナーってなかなかいないじゃないですか。僕たちとしては、一部の人に熱狂的に愛されるアシスタントロボットという糸口を、ひとつの突破口にしたいと考えています。

 仮にですよ、本当にもし仮にですが、サイコパスに出てくるようなホログラムアシスタントが実現すれば、展開次第ではSiriやGoogleNowなど相手にならないような、理想のアシスタントロボットになると思うのですが。気が早いですかね(笑)すいません。ちょっと興奮してしまいました。

 そうなればよいのですが(笑)Siriなどに比べると、データ蓄積や経験で劣る部分は多いのですが、ユーザーが常に一緒にいたいと思える製品になれば、新しい可能性が見えてくると思っています。

逢妻ヒカリ

 キャラクターについてもお話をお伺いしたいと思います。現在、ウィンクルでは逢妻ヒカリちゃんというオリジナルキャラクターを発表されています。今後、キャラクターはどんどん追加される方針なのでしょうか

 キャラクターは使う人によって変えられるようにしたいですし、すでにあるキャラクターとのタイアップや、コラボレーションも視野に入れています。もちろん、女性向けキャラクターを取り入れることも検討中です。というよりも、実はその意見がめちゃくちゃ多いんですよ。僕は“イケメンニーズ”と呼んでいるのですが。ただ僕らが作ろうにも、何が「ぐっとくる」のかがまだ理解できておらず、非常に難儀しております(笑)

 昨今の「おそ松くん萌え」など見ていても、女性のキャラクター愛好家は、いろいろな意味で未知数の潜在力を秘めていますからね(笑)美男子執事なんかも、Gateboxにぴったりという印象です。ちなみに、ハードを作るにあたり技術的に一番難しい部分はどこですか

 そうですね、やはり一番難しいのはコミュニケーションやインプットの精度です。音声認識技術などは世界的に発展途上ですし、まだまだ誤認識やタイムラグがある。使う側からすると、ほんの少し反応が遅れると機械っぽさを感じますし、感情も冷めてしまいます。そのように、人間が期待している通りの反応をしてくれるか否かというのが、技術として難しいところです。

 他社のサービスロボットにしても、そこは共通した課題となっていると思います。Gateboxとしては、ユーザーを絞っているという点や、物理的なハードではないというという点をアドバンテージにして、課題を解決していきたいです。そのほかにも、例えば「明るい部屋でホログラムが見えるのか」など、細かい技術的な要素はたくさんあるのですが、そこは最新動向などを積極的に取り入れていきたい。それでもやはり、何よりも先に追求しようと考えているのはコミュニケーションの側面です。

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武地実代表(写真中央、パソコンを操作している人物)

 資金調達のニュースなど拝見させていただきましたが、ビジネス的な視点で見た時、周囲の反応はいかがなのでしょうか?

 正直なところ、ビジネス的な前評判というのは賛美両論あります。「すごく面白い」という方、「なんだこれ?」という方、また技術的に可能なのか懐疑的な方もいます。ただ、それでもよいなと思っています。全員が賛成するようでは、つまらないものしかできませんし、会社が方向性として掲げる“クレイジー”とは相容れないので(笑)

 そのほかにも、ロボットには在庫リスクなどがあるため「ビジネスモデル的に儲かるのか?」などよく指摘されますが、夢を実現するために、それらの意見を取り入れつつ、ひとつひとつ歩を進めて行きたいです。

 今後のスケジュールや発売時期などはどのように想定されていますでしょうか。今後の方向性や目標なども含めて教えてもらえれば。

 今年中にクラウドファンディングでさらに資金を集めて、来年中にはみなさんのお手もとに届けしたいと考えています。まずは、しっかりとしたハードウェアを作って、いろいろなキャラクターと一緒に暮らすことができるという“夢”を実現したい。その次の段階として、キャラクター自身が学習してどんどん賢くなっていくような仕組みを作っていく構想があります。

 値段はPCと同じくらいに。物理的な要素がある商品よりもメンテナンスも楽になるかと。投影されるキャラクターのサイズは15センチくらいで、これはフィギュアサイズを想定しました。そこはやはり、みなさんに馴染みがあって、納得できるであろうサイズを追求しています。

 現在、ハードウェア、デザイナーなど含め、幅広く人材を募集しています。やはり、総合技術が必要になってくるので、さまざまな分野の人の能力や知恵を結集したい。僕らは日本-秋葉原発で、“次元の壁を壊す”というのを目標やモチベーションにしているのですが、一緒にクレイジーになってくれる方は、ぜひ一度、ご連絡ください(笑)

絶対に成功させてください(笑)ありがとうございました!

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(取材・文 河 鐘基)