ドローン産業の推移を調査してきた米シンクタンク・ニューアメリカ財団(NAF)は、レポートを発表。ドローンを配置もしくは開発している国が78カ国あると指摘した。そのうち、米国、英国、中国、ロシア、イスラエルなど20カ国以上が、テロ団体など、特定の目標を排除するために軍事用ドローンを保有したり、開発中と説明している。同レポートの内容は、2月22日に「LAタイムス」など欧米メディアによって報じられた。
同レポートによれば、過去10年の間に軍事用ドローンを最も多く使用した国は米国。軍と中央情報局(CIA)は500回以上のドローン攻撃を行い、イスラム国(IS)の組織員などの戦闘員約3800人と、約400人の民間人の命を奪ったという。また、少なくとも8人のアメリカ人が、過去10年の間に7カ国で、ドローンの攻撃によって死亡したとも指摘されている。
なお、軍事用ドローンの攻撃で死亡した民間人の数などは、他のNGO団体などのレポートとは若干の開きがあるものの、概ね一致していると考えてよさそうだ。
米国産軍事用ドローンの輸出については制限が少なくない。これは、弾道ミサイル拡散防止多国間協議体である、ミサイル技術統制体制(MTCR)の制約を受けるためだ。海外輸出については、対外軍人軍事販売方式が採用され、議会の承認を受けなければならない。
そのため、過去数ヶ月の間、軍事用ドローンが輸出されたのは、スペインとイタリアのみとなっている。スペインには非武装リーパー(Reaper)4台が、またイタリアにはヘルファイア・ミサイルと精密誘導爆弾を装着したリーパー2台が販売を承認された。
一方、同レポートは中国の軍事用ドローン輸出に警鐘を鳴らしている。中国はアフリカ、中東、中南米、中央アジアなど、いわゆる貧困国に、米国製やイスラエル製よりもはるかに安価に軍事用ドローンを輸出していというのだ。米専門家は、関連技術の拡散防止に注力してきた米国の努力を阻害するだけでなく、遠距離標的用という用途の敷居を下げる結果をもたらしていると指摘した。
兵器拡散分野の専門家、米コーネル大学のサラ・クレプス(Sarah Kreps)教授は、「中国がドローンを無差別に販売している状況で、ドローン拡散を抑制しようとする米国の努力は無意味(中略)中国製ドローンは、米国が販売を拒否した国たちにとって魅力的だ」と強調した。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、中国のドローン輸出は、中国・航空宇宙科学技術株式会社(CASTC)を中心に、2011年から行われている。中国はCASTCを通じて、少なくとも5台のCH-3レインボードローンをナイジェリアに、4台をイランに、そして台数は不明だが大型CH-4ドローンをパキスタンにそれぞれ販売したという。
SIPRIのピーター・ウェゼマン(Pieter Wezemann)研究員は「世界的にドローン需要が増える状況で、中国がほぼ市場を独占している」とし「中国は武器販売に政治的な制約を受けないので、機会を逃さない」と警告している。
一方、『Wired for War』の著者であるP・W・シンガー氏はロシアとイランを含むいくつかの国がミサイル搭載型ドローンを独自に設計・製作していると言及した。加えて、インドやヨルダンなどでは、イスラエルの軍事用ドローンを導入したとも指摘している。
「このような事例は、ドローン技術が既に世界的に広がっていることを示す。最近まで、“非正常”と認識されてきたものが、“正常”な技術および戦争手段として認識されている」(シンガー氏)
最近では、シリア内戦もドローン戦争の様相を呈している。バッシャール・アル=アサド大統領率いるシリア政府軍と、これを援助するために軍事介入したロシア軍およびイラン軍、対するIS側も標的偵察のために非武装ドローンを導入している。一方、米国と英国は、偵察と攻撃が可能なリーパーを配置・使用している。ナイジェリアでは3日、テロ組織「ボコ・ハラム」に対する空爆に、CH-3ドローン1台が動員されたことが明らかになっている。
なお昨年イスラエルで公開された自爆用ドローンが、今年に入って改めて注目を集めている。イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)が開発した、「ロテムL」「ハーピーNG」「グリーンドラゴン」など、通称“カミカゼドローン”は、目標に突撃し破壊する目的で開発・製作が進められているそうだ。
今回のレポートや分析は米国で発表されたもので、中国を批判的に見る視点が強いが、同様に輸出を進める米国も“同じ穴の狢”もしくは“目糞鼻糞を笑う”類のものに過ぎないだろう。最も多くの民間人を、ドローンを使って殺傷している国が、他国の軍事用ドローン輸出を諌めるのは矛盾した話である。米中以外の国が一丸となって、規制や国際的枠組みを整えていく必要があるのではないだろうか。
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