現在、測量分野ではドローンの利用が非常に期待されています。ドローンは空を自由に飛行できるツール。広い範囲を効率的に計測したり、人が立ち入れないような場所でも、データを収集・計測することができます。
ドローンを使った測量については、日々技術開発や研究が進んでいますが、まだまだ発展途上です。そのため、できることと、できないことが明確に分かれています。
まず現在、ドローンによる測量となると、ほとんどの場合が「写真測量」になります。従来、この写真測量は、60%~80%ずつ垂直写真を重ねて撮影し、対象の位置関係を三角測量の原理で算出して、図面などを作成していく技術でした。言い換えれば、数十枚の連続写真を撮影し、それをつなぎ合わせて点と線で絵を描くというイメージです。
また最近では「SfM法」と呼ばれる写真測量手法により、重ねて撮影した写真の特徴点をPC上で自動的にマッチングさせ、対象の3次元データを計測することが可能になりました。この手法によって、従来数十枚の連続写真だったものが、数百枚の写真をつなぎ合わせることができるようになり、数千万点もの点群データも同時に取得出来るようになりました。このSfM法とドローンを組み合わせることで、以前とは比べものにならないほど簡単に、測量を行うことができるようになっています。
ところが、この写真測量にも限界(上記図を参照)があります。というのも、写真に写っていないものは計測できないのです。例えば、木々に隠れてしまっている地形の形状を、写真測量で計測するのはほとんど不可能。ですが、この木々に隠れてしまっている地形の形状こそ、非常に重要なデータとなります。
例えば、これから太陽光パネルを設置することを計画している山があるとしましょう。そこには木々がうっそうと生えているのですが、計画段階なので伐採などしていません。測量する側は、太陽光パネル設置の設計を行う前に設置に適しているのかを判断、また建設にかかる費用の算出などを行いたいので、地表面の地形がどのようになっているのかを事前に知る必要があります。このような重要なデータが、木々に隠れてしまっているのです。
そのデータは「地表モデル(DEM)」と呼ばれています。地表モデルは、「航空レーザー計測」(有人航空機によるレーザー測距)で計ることが可能です。しかし、有人航空機による航空レーザー計測は、運用コストが高くなるという課題がありました。
そのため、ドローンにレーザー計測システムを搭載することで、写真測量では不十分だった、また有人飛行によるレーザー測量ではコストがかかりすぎていたタスクを、より簡単かつリーズナブルに行えるようにしようという試みがはじまっています。しかし、現段階でまだ、商用利用できるレベルには達していません。
というのも、少し前の時点ではドローンに積載するレーザー計測システムの“重量”が問題になりました。重量物を搭載するドローンは機体、プロペラともに大型になります。ドローンはプロペラの回転数をコントロールすることにより姿勢を制御していますが、プロペラが大型だと慣性の力が強く、回転が止まりづらくなります。結果、姿勢制御の反応が遅れてしまい、最悪の場合墜落してしまうことになります。
現在、非常に軽量なレーザー計測システムの販売が開始され、導入会社から計測サービスも発表されています。それでも、レーザー計測システム自体は非常に高価なシステムのままであり、計測後の処理にも設備が必要になりますので、導入コストが高い状況が続いています。
とはいえ、今後、「ドローンによるレーザー計測」は発展していくことは間違いないはずです。ドローンに搭載できるレーザー計測システムのコストダウンや性能向上、そして実際の計測事例が増えることが期待されています。