ドローンデータ収集・解析のスカイフューチャーズCEO・James Harrisonインタビュー

ロボティア編集部2016年3月4日(金曜日)

 ロボティア編集部では、世界のドローン企業を取材。今回はイギリスに本社をスカイフューチャーズ(sky-futures)に書面インタビューを敢行し、ジェームス・ハリソン(James Harrison)CEOに回答をいただいた。スカイフューチャーズは、石油やガスなどの施設を中心に、地上、海上の双方でドローンを使ったデータ収集、分析を行うサービスをクライアントに提供している。合計で10億円以上の投資を受けるなど、ドローンを使ったサービス企業として高い知名度を誇っている。

-以下、インタビュー

―CEOとしては、なぜドローン関連ビジネスを始めようと考えたのでしょうか

 イギリス軍に在籍していた時に、ドローンによって有用なデータを集めることにポテンシャルを見出しました。イギリス軍で同僚であった共同創業者のクリス・ブラックフォード(Chris Blackford)、商業用飛行機パイロットのニック・ロジャー(Nick Rogers)とともに、2009年にスカイフユーチャーズ(Sky-Futures)を設立しました。私たちはみなドローンを利用すれば、データを速く、また効率よく収集できるという点にポテンシャルを感じていましたし、正しい産業に応用されれば多大な利益をもたらしうることを知っていました。

 データ収集においてドローンを採用することは、最も効果的で安全な方法です。より商業的な応用の道筋が見つかり、取得されたデータがより高度な方法で分析されるにつれ、同市場は成長するでしょう。私たちは、多大な利益をもたらすこのエキサイティングな成長産業の一部でありたいと思っています。

―スカイフューチャーズの主なビジネス領域はなんですか

 地上、海上双方における、グローバルな石油とガスセクターです。

― スカイフューチャーズの主なサービスはなんですか

 現在は、クライアントの資産をドローンで点検するサービスを提供しています。私たちはクライアント、インフラのデータを集めるドローンパイロットと緊密に協働するエンジニアを有しています。集められたデータは、私たちのソフトウェアプログラム内で分析され、クライアントに届けられます。将来的には、私たちの主要なサービスは高度な分析と解析になるでしょう。

スカイフューチャーズHP
All photo by sky-futures HP

―石油ガスプラントにおけるドローン点検の需要は大きいと感じますか。またそれは、今後非常に大きくなるでしょうか

 現在の石油価格が低い状況においても、効率的かつ効果的な点検への需要は大きいです。たったの5年で、私たちは35ものクライアントを獲得し、現在はこれらのクライアントと世界の5つの地域にわたって協働しています。最近では、世界で最も大きい石油掘削市場であるメキシコ湾岸での初の点検を終えました。今後数年間、この市場が私たちにとっての最大の市場になると見込んでいます。

―主要なクライアントはどの地域ですか

 最大のマーケットは依然、私たちのホームマーケットである北海となっています。ほとんどの石油ガス会社に対しては、北海でサービスを提供しています。今後数年間ではアメリカ、中東、東南アジアでより多くのクライアントと働くことを見込んでいます。

―スカイフューチャーズに投資している投資家を教えてください

 最近の投資ラウンドでは、ブリストー・グループ(Bristow Group)から420万ドルの投資、既存の投資家であるMMCベンチャーズ(MMC ventures)から150万ドルの投資を受けました。この結果、トータルの投資額は1,000万ドルとなっております。

―スカイフューチャーズのテクノロジーの中で、差別化されている部分、またスペシャルな部分を教えてください

 私たちのソフトウェアは、経年による腐食や構造変化のより優れた計測を可能にします。また、石油ガス産業での応用に特化したソフトウェアとセンサーも開発しています。クライアントの現在の課題とニーズに合ったソフトウェアを開発することで、私たちは産業にとってより価値のある“何か”を作りだせると考えています。

―技術の正確さはどのくらいですか

 私たちの腐食計測ソフトウェアは、従来不可能だった構造の経年変化を実際に目にすることができます。私たちのレーザーによる計測技術は、例えば、腐食を1mm単位で計測することができます。

スカイフューチャーズ_トレーニングアカデミー
スカイフューチャーズ・トレーニングアカデミー

―売り上げはどれくらいですか

 売上規模は公開していません。

―スカイフューチャーズの主要サービスの価格は

 ロープで人が行うような従来の点検に比べて、ドローンによる点検は安価であると考えられています。私たちの点検はより速く終わり、必要とされる人員は少なく、必要とされる機材も従来の点検に比べて少なくなっています。

―競合はどの企業ですか

 多くの会社が商業用のドローン市場に参入しています。そのなかでは、データ取得、分析、解析を石油ガス産業に対して特定して提供しているのは私たちだけです。

―今後、競合会社の出現や競争が始まると思いますが、勝ち抜くための強みは何でしょうか

 上記のように、私たちは、グローバルの石油ガス施設の点検のスペシャリストです。私たちは、イギリスにあるドローントレーニングセンター(アカデミー)において、世界スタンダードとして認識されうるドローン操縦者を訓練しています。また、私たちは、自社の技術チームで石油ガス産業のために発展させた点検を、エンジニアリングエキスパートおよびソフトウェアとともに提供します。

―よりグローバルに経営を展開するための戦略はありますか

 ブリストーとのパートナーシップは、私たちのドローン点検ビジネスを拡大することにつながるでしょう。私たちは多くの共通したクライアントを有し、今後も、共通のクライアントを基盤とした協働を進めていくからです。そんな、戦略的パートナーシップは、安全、効果的かつコスト効率的な点検サービスを、メキシコ湾岸などにサービス拡大することを可能にするでしょう。そうして、オペレーションを拡大し、世界をリードするドローントレーニングアカデミーで訓練された、ドローンパイロットの数を増やすことを計画しています。

―日本にはクライアントがいますか

 まだ日本にはクライアントがいませんが、ペトロナス(Petronas=マレーシアの国営企業)やタリスマン(Tailsman=カナダ石油大手)などのクライアントとともに、東南アジアではすでに活発にビジネスを展開しています。

スカイフューチャーズ_パイロット

―現状のビジネス以外では、将来的にどんなビジネスに参入していこうと考えていますか

 ブリストーとのパートナーシップは、石油掘削装置の潜在的問題を同定し、正確に腐食を予想するプロセスを自動化するソフトウェアを、さらに発展させていくことを可能にします。

―将来的には、どの地域に最も多くの力を注ごうと考えていますか

 アメリカが、私たちの最大の市場になると予想しています。

―他の企業が貴社のビジネス領域に参入することは難しいと思いますか。理由も合わせて教えてください

 一見すると、ドローン技術がより手に入りやすくなっているで、私たちのビジネス領域の参入障壁は低いように思われます。しかし、安全にオペレーションを実行するのは簡単ではない。これは石油ガス産業では特に重要なのですが、私たちはオペレーション手順を数年間にわたり発展させ、世界でも最も危険でチャレンジングな環境でビジネスを行うことを可能にしてきました。

 私たちは、ドローンのオペレーターが安全にオペレーションを実行できるように、何時間にもわたるトレーニングや、現実的な想定でのフライト練習を行います。加えて、クライアントにデータを見て分析するためのユニークな能力を与えるソフトウェアと、解析ツールを発展させてきました。

―今後、さらなるサービス向上のために、解決すべき問題はありますか

 現在、私たちはクライアントの資産を効率的にすることで、クライアントにとっての多くの問題を解決しています。現在、私たちは点検の安全性を向上させ、またコスト効率性と従業員の安全を地上、海上双方において向上させるために、全ての点検プロセスの自動化と合理化に取り組んでいます。

スカイフューチャーズ

―CEO個人として、ドローンに対してどのような思いを抱いていますか

 私はデータ分析とますます効率的になるテクノロジーの使用に、熱心に取り組んでいます。ドローンは、あまたの産業に対して、安全な方法でクオリティの高いデータを提供するための最高の手段であると考えています。

―ドローンは将来どのような役割を担うとお考えですか

 私たちはいつも、ドローンは単にデータを集める手段に過ぎないと言っています。最も重要なことは、ドローンによって、以前にはできなかったような方法でデータを見られるようになるでしょう。また、産業と個人の価値があがり、活用可能なデータが集まることで、ビジネスにも革命的変化がもたらされると考えています。

All photo by sky-futures HP