フォクスコンが工場をロボット化...6万人分の雇用削減へ

ロボティア編集部2016年5月29日(日曜日)

 アップル、サムスン電子、マイクロソフトなどの携帯電話を製造する企業・フォックスコン(Foxconn=鴻海科技集団)が、工場にロボットを投入し、人間の労働者と大幅に代替する方針であることが明らかになった。これにより、約6万人が職を失うと予想されている。また、アップルがこれから先に発売するiPhoneやiPad、またサムスンのギャラクシーシリーズは、ロボットが組み立てた製品となる可能性が高い。

 フォックスコンはロボットの導入をさらに進めることで、人件費の大幅な削減が可能になると期待を示している。同時に、人間の労働者に週60時間以上の業務を禁止している中国労働法の規定に違反ぜず、既存の生産性を維持できるとの見通しだ。

 これらは、フォックスコンに製造業務を委託するグローバル電子企業にも朗報になると注目されている。人件費が減るため出費を節約することができるからだ。

 最近、中国ではロボットを生産ラインに投入する企業が急速に増えている。並行して、単純作業に従事する労働者の雇用が奪われ、失業が深刻化するという懸念が出始めている。フォックスコンはロボットの導入について「単に大量の失業が発生することを意味しない」と否定。研究開発、品質管理などの高付加価値の製造工程に、既存の労働者を誘導することになると楽観視している。つまり、人間は単純な作業から解放され、さらにクオリティーの高い仕事をするようになるというのだ。

foxcon
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 巷では、フォックスコンの工場における作業風景の変化を、「第4次産業革命」への突入を象徴する出来事だと見る向きが多い。

 これまで産業用ロボットは、主に基礎的な製造過程に活用されてきた。現在は、大量のデータを取得したり、人間に近い柔軟な知覚・作業をこなす方向で発展しつつある。米アマゾンの物流倉庫はすでに自動化されており、さらに人間のコミットなしで注文業務を実行するロボットの開発が進められているという。

 経営コンサルティング企業・デロイト(Deloitte)は、最近オックスフォード大学と共同で提出した報告書で、ロボットの導入により今後20年間で、仕事の35%が消えると予想している。日本の経済産業省も4月末に発表した報告書(「新産業構造ビジョン」 ~第4次産業革命をリードする日本の戦略~ 産業構造審議会 中間整理)で、人工知能とロボットの導入に対応できないと、2030年までに国内の雇用が735万人分減少すると予測している。

 日本政府は、今後やってくる技術革新に適切に対処できれば、高度のコンサルティングが必要な営業および販売職などのサービス業で、新たな雇用創出が起こるとも予想しているものの、現状を楽観視するよりも「第4次産業革命」に向けた体制作りを本格的に急ぐ必要があるとの見解を示している。