ハーバード大学の学生・セレナ・ブース(Serena Booth)さんは、人間とロボットの相互作用に関する研究の一環として、非常に興味深い実験を行いました。それは「得体の知れないロボットから頼まれごとをした時、人間はどう反応するのか」を調べたものでした。
今回、ブースさんが実験に使用したのは、ユージンロボット社が開発した「Kobuki」と呼ばれるロボットプラットフォーム。ロボット自体は60㎝程度の大きさで、カメラが搭載されており、遠隔地から操作することができる仕様でした。
実験が始まると、ロボットはセキュリティ装置が設置されている、ハーバード大学の寮を訪問。生徒にドアを開けてくれと頼みました。その要求に対して学生は、一人の場合、約19%がドアをオープン。一方、複数のグループを形成していた場合には、71%がロボットの出入りを許可しました。ほとんどが、ロボットのお願いに素直に耳を傾けたことになります。なお、調査対象となった全108人の学生のうち、ロボットに通行用のカードキーがあるか確認したのは、わずか1人でした。
ブースさんはさらに、ロボットを“変装”させて、再びドアの突破を試みました。次の段階ではロボットに「ロボットグラブ(RobotGrub)」という偽のスタートアップ企業の「お菓子配達ロボットだ」と自らを紹介するようにしたそうです。するとどうでしょうか。なんと、76%の学生がロボットの出入りを許可してしまったそうです。
実験終のインタビューで、数人の学生は、ロボットが内部セキュリティの脅威になる可能性があると考えていたのにもかかわらず、侵入を許したことが明らかになりました。また一部の学生は、SNSに上げる動画を撮影するために、好奇心に駆られてロボットを招き入れたそうです。
ブースさんは今回の研究を通じて、人々がロボットを“過度に信頼している”という結論を得るにいたりました。もし仮に、ロボットがお菓子ではなく、爆弾や武器を搭載していたら...厳重なセキュリティも、人間の警戒心が働かなければ無用の長物。今回の実験は、人間とロボットの関係において、非常に考えさせられる結果を残したのではないでしょうか。
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