韓国通信大手・KTがビックデータで感染症ウイルスの検疫強化

ロボティア編集部2016年6月24日(金曜日)

 韓国ではビッグデータを活用した、政策的な取り組みが本格化している。2013年に誕生した未来創造科学部は、情報化振興院(NIA)とともに同年、「ビッグデータ分析活用センター」を創設するなど、ビッグデ ータ事業を強化している。

 なかでも韓国の大手通信事業者であるKT(旧Korea Telecom)は、多数のデータセンターのほか、数々の関連施設を保有しており、日々膨大なデータを収集・分析し、ビジネス価値の向上につなげている。

 韓国といえば、昨年のMERSコロナウイルス(MERS=マーズ)の流行が記憶に新しく、海外発ウイルスに対する防疫の重要性が議論されている。そのような海外の感染症が国内に流入されるのを防ぐため、KTは未来創造科学部、疾病管理本部とともに、ビッグデータを活用した「感染症ウイルス遮断システム」を開発中している。

 KTはデータを法務部が管理する出入国システムと連携させ、ウイルスの感染などで渡航が懸念される国家に訪れた際には、旅行日程を全てチェックし、帰国にあわせて疾病管理本部から、検疫のお知らせメッセージが配信されるよう、システムを組んでいる。

 入国審査場にたどり着く前に検疫を行うようになり、入国審査場でパスポートをスキャンすれば、検疫対象者という事実が公示される。疾病管理本部が行った既存の検疫システムでは、ウイルス感染者の最終渡航先しか把握しきれず、どこを経由したのかわからなかった。そのため、ブラジルから韓国へ帰国する際、ドイツを経由し入国した国内最初のジカウイルス感染者を特定できず、国内感染拡大の引き金となってしまった背景がある。

ビックデータ_検疫
photo by incheonilbo.com

 KTは、8月にブラジルのリオデジャネイロで行われるオリンピックを控え、システムの稼働を本格化させたい狙いだ。実はKTビックデータセンターは、2014年からビッグデータを活用したウイルス防疫事業を牽引してきた。例えば、家畜伝染病の場合、トラックを通じて最初の発生地から他の地域に広がるのだが、農林畜産食品部から家畜運搬トラックの運行情報を受け取り、口蹄疫と鳥インフルエンザ の潜在発生地域を予測している。2014年12月から2015年3月までの初施行で、KTは実際鳥インフルエンザ発生102件のうち93件を事前に予測していた。

 KTが事前予測した地域の鳥インフルエンザ検疫を強化すると、2015年9月から今年3月まで発生した鳥インフルエンザ件数は、14 件と大幅に減ったのだという。既存のノウハウを生かして感染症ウイルスの徹底防止となるのか。国際的にも脅威となり得る感染症対策に、関心が高まっている。